野村光一

野村光一

野村光一（のむら こういち、1895年9月23日 - 1988年5月22日）は、日本の音楽評論家であり、その生涯を音楽に捧げました。大阪府に生まれ、京都府立第二中学校（現在の京都府立鳥羽高等学校）を経て、1920年に慶應義塾大学文学部哲学科を卒業しました。大学では小宮豊隆に師事し、文学と哲学の素養を深めました。

海外留学と音楽への傾倒

1921年、野村は音楽の本場であるイギリスに渡り、ロンドンの王立音楽アカデミーでピアノを学びました。この留学中に、彼はブゾーニやラフマニノフといった巨匠たちの演奏に触れ、その音楽に対する情熱を一層燃え上がらせました。その後、ドイツにも留学し、1923年に帰国しました。

評論家としての活動

帰国後、野村は新聞や雑誌で音楽評論活動を本格的に開始しました。彼の評論は、音楽への深い愛情と理解に基づき、客観的かつ鋭い視点を持っていました。彼は、演奏家や作品の背景にある歴史や文化を詳細に分析し、読者に音楽の魅力を伝えていました。

日本音楽界への貢献

1932年、野村は堀内敬三らとともに「音楽コンクール」（現在の日本音楽コンクール）の創設に尽力しました。彼は、このコンクールの発足時から審査委員長と理事を務め、日本の音楽界の発展に大きく貢献しました。彼の功績を称え、1988年からは「野村賞」が新設されました。

1963年には、日本ショパン協会の会長に就任し、1981年までその任を務めました。ショパンの音楽に対する深い造詣と情熱は、多くの音楽ファンに感銘を与えました。

受賞歴

1967年、長年の音楽評論活動が評価され、紫綬褒章を受章しました。さらに、1968年には勲四等旭日小綬章を受章し、1984年にはモービル音楽賞を受賞するなど、数々の栄誉に輝きました。

その他の活動

1944年には、毎日新聞社に入社し、ジャーナリストとしても活躍しました。また、彼の娘である輝子は東京藝術大学ピアノ科を卒業し、ピアニストとして活動しました。輝子は、谷崎潤一郎の娘にピアノを教えていたこともあり、文化的な背景を持つ人物でした。

主要著作

野村は数多くの著作を執筆し、音楽の魅力を広く伝えました。主な著作には以下のようなものがあります。

『樂壇隨想』（ビクター出版社、1931年）
『レコード音樂讀本』（中央公論社、1934年）
『名曲に聴く』上・下（創元社、1940年）
『批評から見た音樂二十年』（音樂評論社、1948年）　山根銀二と共著
『ピアノ音楽史』（音楽之友社、1951年）
『レコードに聴くピアノ音楽』（音楽之友社、1953年）
『音楽の窓』（音楽之友社、1958年）
『ピアニスト』（音楽之友社、1973年）
『ピアノ回想記 : ピアノに憑かれて七〇年』（音楽出版社、1975年）
『野村光一音楽随想 : ワーグナーは敗けだ』（音楽之友社、1985年）

これらの著作は、彼の音楽に対する深い愛情と知識が詰まっており、音楽を愛する人々にとって貴重な資料となっています。

晩年と遺産

野村光一は、1988年に92歳で亡くなるまで、音楽評論家として精力的に活動を続けました。彼の音楽に対する情熱と貢献は、今日においても多くの人々に影響を与え続けています。

野村光一は、日本の音楽評論界における重要な人物であり、彼の活動は日本の音楽文化の発展に大きく貢献しました。彼の残した数々の著作や評論は、今後も多くの人々に読み継がれることでしょう。

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