野猿街道

野猿街道（やえんかいどう）は、東京都多摩地域に存在する、複数の東京都道を合わせた通称名称を持つ道路です。具体的には、東京都道20号府中相模原線のうち国立市青果市場東交差点から八王子市下柚木交差点までの区間と、東京都道160号下柚木八王子線の八王子市下柚木交差点から同市横山町の国道20号（甲州街道）交点までの区間を指します。

この街道は、多摩ニュータウン北部や八王子市東部における主要な幹線道路として機能しており、西側では国道20号日野バイパス（中央自動車道国立府中インターチェンジ付近）と、東側では国道16号八王子バイパス（打越インターチェンジ）とを結ぶ重要な役割を担っています。特に、1998年に多摩川を跨ぐ府中四谷橋が完成し、国立府中インターチェンジ近くの国道20号と直接接続が可能となったことで、街道の終点が多摩市一ノ宮から国立市谷保へと延伸され、利便性が大きく向上しました。

道路の構造は区間によって異なります。国立市青果市場東交差点から八王子市打越交差点までの広範囲は、おおむね片側2車線の計4車線で整備されており、円滑な交通を支えています。しかし、八王子市内の区間では状況が変わります。北野町南交差点から子安町五差路交差点にかけては片側1車線の計2車線となり、子安町五差路交差点からJR中央本線の跨線橋南側付近までは、センターラインのない狭隘な区間も存在します。JR中央本線を越える跨線橋は、かつて北向きの一方通行でしたが、架け替え工事を経て2010年11月20日からは南北双方向の通行が可能となりました。ただし、国道20号（甲州街道）に接続する直前の区間は、現在も南向きの一方通行（1車線）となっています。

野猿街道という名前は、街道沿いにある八王子市下柚木の野猿峠（標高約160メートル）に由来しています。この峠は古くは猿丸峠や猿山通りとも呼ばれており、かつて由木村（現在の八王子市の一部）と八王子の中心部を結ぶ重要な経路でした。峠には、旅人が休憩する際に馬や牛に水を与えるための水飲み場が設けられていたといいます。また、由木地区から八王子中心部への野猿街道のルートの一部は、江戸時代に利用されていた小野路道（甲州街道の八王子宿と町田市の小野路を結んでいた道）に沿っています。この小野路道の名は、現在でもJR横浜線の「小野路街道踏切」という名称に残されています。

野猿街道が通過する市町村は以下の通りです。

国立市
府中市
多摩市
日野市
* 八王子市

街道と交差する主な道路としては、川崎街道、柚木街道、国道16号八王子バイパス、国道20号甲州街道などが挙げられます。

沿道や周辺には、JR八王子駅、京王高尾線北野駅といった鉄道駅のほか、長沼公園、永林寺などの自然や歴史を感じさせるスポットがあります。また、中央大学（多摩キャンパス）、明星大学（日野キャンパス）、帝京大学（八王子キャンパス）、多摩美術大学（八王子キャンパス）といった多くの大学キャンパスが点在しています。

この街道に関連するものとして、名称の由来となった「ホテル野猿」や、そのホテルから生まれたユニット「野猿」、計画段階での仮称が野猿街道駅であった大塚・帝京大学駅、そして野猿峠ハイキングコースなどがあります。

このように、野猿街道は単なる道路としてだけでなく、地域の歴史や文化、そして現代の交通を支える重要なインフラとして、多摩地域において広く認識されています。

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