野田敬三

野田敬三六段：30歳でのプロ入りと波乱に満ちた将棋人生

野田敬三六段は、1958年1月24日生まれの将棋棋士です。兵庫県出身で、森安秀光九段を師匠として持ち、棋士番号は186番。その棋士人生は、並々ならぬ努力と、数々のドラマチックな出来事に彩られています。

中学時代からの情熱と奨励会入会

5、6歳の頃、近所の子供たちの将棋に接したことがきっかけで将棋に興味を持ちますが、本格的にのめり込んだのは中学2年生の時でした。それから3年間、毎週土日に森安秀光五段（当時）の教室に通い続け、最終電車で帰宅するほどの熱意をもって将棋の腕を磨きました。その熱意が実り、17歳で奨励会に入会します。

プロへの道：三段リーグの苦闘と30歳でのプロ入り

奨励会では順調に昇級・昇段を重ね、1979年12月には三段に昇段。しかし、そこからが試練の始まりでした。1982年4月には二段に降段、8月に三段に復帰するものの、なかなか四段昇段（プロ入り）にたどり着けません。その後、1987年に三段リーグ制度が復活し、プロ入りの道はさらに狭き門となりました。第1回三段リーグでは17人中16位と惨敗を喫しますが、第2回では見事に巻き返し、2局を残した時点でプロ入りを決めました。

1988年4月1日、30歳2か月でのプロ入りは、戦後生まれの棋士としては当時2番目の高齢記録であり、二段に降段後プロ入りを果たした唯一の棋士（2014年時点）という異例の経歴です。

プロ棋士としての歩み：銀河戦での輝きと順位戦の苦悩

プロ入り後は、1998年度と1999年度に30局前後の対局で勝率5割前後という成績を残し、棋士人生のピークと言える活躍を見せます。しかし、順位戦や竜王戦では目立った昇級はありませんでした。順位戦では15年間C級2組に在籍し、降級点が累積3点となったため、2003年度からフリークラスとなりました。竜王戦でも最高成績は6組ランキング戦準決勝進出でした。

公式戦の本戦出場は長らく叶いませんでしたが、プロ入り23年目となる第19期銀河戦で、ブロック戦を勝ち抜き、念願の決勝トーナメント進出を果たしました。

引退：三段リーグ出身者初の引退とNHK杯戦の記録

フリークラスに降級後、順位戦C級2組復帰の条件を満たす成績を10年間収めることができず、2012年度をもって引退が内定しました。2013年5月29日の竜王戦1回戦では勝利したものの、6月27日の2回戦で敗れ、同日をもって引退。三段リーグを勝ち抜いてプロ入りした棋士の引退は、野田が初めてでした。

また、NHK杯戦ではプロ入り翌年から引退まで25回連続で予選敗退。本戦出場を果たすことなく引退したことは、NHK杯戦予選制導入以降にプロ入りした棋士の中では非常に珍しいケースです。

人物像：体力勝負と師匠との深い絆

野田六段は、薄くたくわえた口髭がトレードマーク。体力に自信があり、「ジャングル野田」というキャッチフレーズで知られています。体力勝負で相手を疲れさせて勝つスタイルで知られていました。1993年には師匠の森安秀光九段を亡くすという悲劇も経験しています。

棋風と弟子

居飛車党で、相掛かりやひねり飛車を好んで使用。プロ棋士の中では珍しい棋風でした。プロ入り当初は、玉を堅く囲い合う前に戦いを始めるスタイルが多かったようです。弟子には女流棋士もいます。

野田敬三六段の棋士人生は、努力と才能、そして幾多の困難を乗り越えた、波乱に満ちた物語でした。その生き様は、後進の棋士たちに大きな刺激を与え続けることでしょう。

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