金仁問

金仁問の生涯

金仁問（キム インムン）は新羅の歴史において重要な役割を果たした王族出身の将軍で、629年に生まれ694年4月29日に亡くなりました。彼は文武王の弟であり、武烈王の次男です。字は仁寿とされ、学問や武技に優れた多才な人物でした。

儒教・老荘思想・仏教の知識

金仁問は、儒教をはじめ老荘思想や仏教にも精通しており、その知識と教養は当時の新羅において貴重なものでした。彼は特に戦略や外交においてその才能を発揮し、新羅と唐の関係を強化する上で重要な役割を果たしました。

651年には、真徳女王の命により初めて唐に渡り、以降22年間にわたって新羅のために活動しました。彼は唐において高宗から左領軍衛将軍の地位を与えられ、唐と新羅の外交の主導者となりました。653年に帰国した際には、押督州総管に任命され、武烈王からの厚い信任を受けていました。

百済遠征と高句麗遠征

660年、金仁問は高宗の百済遠征軍に副将として参加し、蘇定方率いる唐軍を先導しました。661年から始まった高句麗遠征では、高宗の命令を本国に伝える役割を担い、新羅軍を指揮して平壌への軍糧供給を行いました。彼の指導力により、新羅軍は多くの成果を上げました。

再度唐に渡った金仁問は、666年には高宗の泰山で行われた封禅の祭祀に供奉し、右驍衛大将軍の称号を授けられました。668年、再び高句麗討伐が命じられた際には、新羅軍を唐軍と合流させることで、戦局に貢献しました。

新羅王の権利と唐との関係

674年、文武王が高句麗王族の安勝を百済の故地に引き入れて新羅の傀儡国家を立てようとした動きに対し、高宗は金仁問を臨海郡公に封じ、文武王に代わって新羅王に冊封しようとしましたが、金仁問はこれを固辞し帰国しました。この決断は、彼の誇り高い性格を示す一例です。

その後、文武王の謝罪を受けて再び唐に戻り、679年には鎮軍大将軍行右武威大将軍に転任、690年には輔国大将軍上柱国、左羽林郡大将軍の地位を与えられるなど、さらなる栄誉を受けました。しかし、694年には長安で病気により亡くなりました。

遺骸と生涯の評価

金仁問の遺骸は新羅に送られ、孝昭王は彼に太大角干の官位を追贈しました。彼の生涯は、学問、軍事、外交においての多才さを身をもって示したもので、歴史に名を刻むものでした。新羅の将軍としての彼の偉業は、後世においても語り継がれることでしょう。

参考文献

• - 「世界大百科事典」 平凡社 2007年
• - 「アジア人物史 2」 集英社 2023年

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