金利スワップ

金利スワップ（Interest Rate Swap, IRS）とは

金利スワップは、当事者間で合意された想定元本、期間、利息交換日に基づき、金利を交換するスワップ取引の一種です。特に、変動金利と固定金利の交換が一般的であり、デリバティブ取引として広く利用されています。

金利スワップの起源

金利には、短期変動金利と長期固定金利の2種類が存在します。短期変動金利は中央銀行の政策金利に連動し、経済状況や政策判断によって変動します。一方、長期固定金利は住宅ローンや長期債券などに適用され、長期間一定の利率が適用されます。

多くの金融機関は、低い変動金利で資金を調達し、固定金利で貸し出すことで金利差益を得ています。しかし、変動金利が固定金利を上回ると逆ザヤが生じ、損失が発生するリスクがあります。1970年代、アメリカではオイルショックなどの影響で変動金利が乱高下し、住宅ローンを主要業務とする金融機関が破綻する事態が発生しました。この金利変動リスクを回避するために考案されたのが、金利スワップです。

金利スワップの初期形態

例えば、A組合が3%の変動金利で預金を集め、5%の固定金利で住宅ローンを貸し出しているとします。変動金利が5%を超えて上昇した場合、A組合は損失を被る可能性があります。

そこで、A組合は投資銀行などのアレンジャーを相手に、変動金利と固定金利を交換する契約を結びます。具体的には、A組合は投資銀行に4%の固定金利を支払い、変動金利の支払いを肩代わりしてもらいます。これにより、変動金利上昇のリスクは投資銀行が負うことになります。

この取引により、A組合は4%の固定金利で資金を調達し、5%の固定金利で貸し出すことになり、金利変動リスクを回避できます。投資銀行は、変動金利が平均して4%を超えないと見込んで利益を得るか、同様のニーズを持つ他の顧客に仲介し、手数料を得ることで利益を上げます。

取引の進化とともに、オプション取引と組み合わせた「スワップション」など、複雑な金融工学的手法が用いられるようになり、大手金融機関が高度な金融技術を用いて金利変動リスクのヘッジを提供しています。

金利スワップの概要

金利スワップでは、通常、元本を交換せず金利のみを交換します。したがって、金利計算の基準となる想定元本を決定する必要があります。

例えば、企業が変動金利型の借入契約（元本10億円、期間5年、金利：3ヶ月TIBOR連動）を締結した場合、金利変動リスクを回避するために、以下のような金利スワップ取引を締結します。

想定元本：10億円
利息交換期間：5年（借入期間に連動）
受取変動金利：3ヶ月TIBOR
支払変動金利：固定（1.7%）

この金利スワップにより、借入による変動金利が相殺され、常に1.7%の固定金利を支払うのと同じ効果が得られます。つまり、変動金利の借入を固定金利の借入に変換したことになります。

企業が金利スワップを利用する目的は、主に以下の2点です。

1. 利得目的: 将来の金利動向を予測し、相場観に基づいて利益を追求します。
2. リスクヘッジ目的: 金利変動リスクを回避し、キャッシュフローを安定化させます。相場変動リスクヘッジとキャッシュフロー変動リスクヘッジを同時に行うことはできません。

金利スワップの会計処理

金利スワップは、原則として時価評価が必要です。しかし、「金融商品に関する会計基準」および「金融商品会計に関する実務指針」に定めるヘッジ会計の適用要件を満たす場合、ヘッジ会計を適用できます。

さらに、一定の要件を満たす取引については、例外的に時価評価を行わず、金利スワップの受払による純額を対象資産または負債の利息に加減する特例処理が認められています。

金利スワップの種類

プレイン・スワップ: 最も基本的な金利スワップ（固定対変動）。
ベーシス・スワップ: 変動金利同士の金利スワップ（例：6ヶ月物LIBOR対3ヶ月物LIBOR）。
通貨スワップ: 異なる通貨間のスワップ。元本の交換があるものとないものがあります。
オーバーナイト・インデックス・スワップ (OIS): 一方または両方のキャッシュフローが翌日物金利と連動するもの。
アモータイジング・スワップ: 想定元本を定期的に減少させるスワップ。
インフレーション・スワップ: 固定金利と消費者物価指数などの物価指数と連動する変動金利のスワップ。

複合取引

金利スワップ取引を構成要素に持つ複合取引として、アセットスワップがあります。これは、国債の売買と同時に、金利スワップを行う取引です。

参考文献

「金融商品に関する会計基準」
「金融商品会計に関する実務指針」
「金融商品会計に関するQ&A」

関連項目

デリバティブ取引
ヘッジ会計
通貨スワップ
スワップション
スワップ金利

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