金喬覚

金喬覚（きん きょうかく）は、7世紀から8世紀にかけて唐代に活動したとされる伝説的な僧侶です。伝承によれば、新羅の王子として生まれ、中国仏教における地蔵菩薩信仰の中心地である九華山（安徽省青陽県）において、地蔵菩薩の化身として深く崇敬されています。

しかし、中国や朝鮮の歴史資料を詳細に検証しても、「金喬覚」という人物の実在を直接証明する確固たる証拠は見つかっていません。彼の説話は、新羅から九華山に渡った釈地蔵をはじめとする新羅出身の僧侶たちの事績と、地蔵菩薩への信仰が融合し、長い時間をかけて形成・発展したものと考えられています。

伝説によれば、新羅の王子として生まれた金喬覚は、若くして唐へ留学し、その地で仏教に深く触れました。新羅へ帰国後、彼は王子としての贅沢な生活に満足できず、世俗を離れることを決意します。彼は髪を剃り落とし、僧侶として出家しました。その後、彼は白犬を伴い、再び唐へと渡り、厳しい放浪と修行の日々を送ったと伝えられています。彼は九華山にある化城寺（けじょうじ）という寺院で12年間ひたすらに修行に励んだとされています。

貞元10年（794年）、金喬覚は99歳で入寂しました。彼は生前、地蔵菩薩になることを強く願っていたと伝えられています。彼の死後、その肉体は3年経ってもまるで生きているかのように保たれていたため、そのまま塔に納められ、肉身仏（即身仏）として寺の本尊とされました。この肉身仏は、現在も九華山の化城寺に祀られていると言われています。

興味深いことに、同様の説話は『宋高僧伝』に収められた釈地蔵の伝記にも見られます。このことから、金喬覚の伝説の基礎となる出来事や人物が存在した可能性が示唆されます。金喬覚の生涯は、伝説と信仰が織り交ざり、今日まで語り継がれています。

九華山は現在も地蔵信仰の中心地として多くの巡礼者を集めており、金喬覚の伝説は、その信仰を支える重要な要素となっています。

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