金子与重郎

金子 与重郎（かねこ よじゅうろう）

大正から昭和期にかけて、農業経営者として地域産業の振興と農村生活の向上に貢献し、後に政治家として衆議院議員を務めた人物です。1901年（明治34年）1月27日、群馬県勢多郡粕川村大字室沢（現在の前橋市粕川町室沢にあたる地域）で、金子新作氏の長男として生を受けました。

少年期を地元で過ごした後、群馬県立勢多農林学校で農業の専門知識を学び、さらに1919年（大正8年）には盛岡高等農林学校の農学科別科を卒業しました。学業を終えて故郷に戻った後は、家業である農業に従事しました。

単に農業を営むにとどまらず、地域の発展にも深く関与しました。特に、県下の産業組合の組織化に情熱を注ぎ、その普及と強化に尽力しました。農村部の保健衛生環境の改善にも強い関心を寄せ、組合が運営する厚生病院の設立に貢献することで、地域住民の健康増進に寄与しました。また、群馬県における主要産業の一つであった蚕糸業の振興にも力を入れ、群馬蚕糸会社の設立に参画するなど、産業構造の近代化と発展に貢献しました。

こうした活動を通じて、地元での信頼と実績を積み重ね、地域社会における様々な要職を歴任しました。粕川村の村会議員を務めたほか、粕川信用販売利用組合長、群馬県購買販売利用組合の専務理事および同連合会の総務部長、さらには群馬蚕糸製造の監査役など、多岐にわたる立場で地域経済と住民生活の向上に尽くしました。

これらの地方での経験を背景に、国政への道を歩み始めました。1949年（昭和24年）1月に行われた第24回衆議院議員総選挙では、群馬県第1区から無所属候補として立候補し、初当選を果たしました。その後、政治の舞台で活動を続け、1952年（昭和27年）10月の第25回総選挙では改進党の公認を得て再選されました。続く第26回総選挙でも当選し、衆議院議員として連続して3期にわたり在任しました。

国会議員として在任中、所属政党において重要な役割を担いました。国民民主党では政務調査会の副会長を務め、改進党では政策委員会の副委員長や農林部長などを歴任し、特に農業政策分野で手腕を発揮しました。議員活動に精力を傾けていた最中の1954年（昭和29年）10月9日、志半ばにして53歳で急逝しました。

その長年の功績に対し、死去した日付をもって勲三等瑞宝章が追贈され、また正五位に叙されました。金子与重郎氏は、地域に根差した活動から国政へと舞台を移し、生涯を通じて日本の農業と農村社会の発展、そして政治の場で貢献した人物として記憶されています。

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