金子吉衛

金子吉衛：蕨市の発展に貢献した郷土史家

金子吉衛（かねこ きちえ、1904年～1990年）は、埼玉県蕨市の発展に大きく貢献した人物です。8年にわたる蕨市長在任期間だけでなく、郷土史研究への熱意、そして多岐にわたる行政経験は、彼の生涯を彩る重要な要素となっています。

1904年、埼玉県北足立郡蕨町に生まれた金子吉衛は、蕨第一小学校（現：北小学校）、旧制浦和中学、旧制松本高校と進学し、東京帝国大学経済学部を卒業という輝かしい学歴を築きました。

卒業後の1931年には東京市へ奉職。麻布区長（現在の港区）、文京区助役、東京都立養育院院長、監査事務局長など、重要なポストを歴任し、行政における幅広い経験と手腕を磨いていきました。これらの経験は、後に蕨市長としての活動に大きく活かされることになります。

東京都住宅公団理事として活躍した後、1967年に蕨市長に就任。2期8年間、市民の生活向上に尽力しました。市政における彼の貢献は、蕨市の発展に大きく寄与したことは間違いありません。

市長退任後も、金子吉衛の社会への貢献は続きます。1971年からは郷土史研究会会長として精力的に活動し、蕨の歴史と文化の保存・継承に尽力しました。自ら多くの郷土資料を収集し、東京市の戦前戦後の文献資料は東京都公文書館に、蕨の郷土史に関する資料・著作は蕨市立図書館・歴史民俗資料館別館に寄贈され、現在も貴重な資料として活用されています。

金子吉衛は、行政官としての経験と郷土への深い愛情を背景に、数々の著作を発表しました。『見て来た老人天国』や『わらび雑筆』といった個人的な著作から、『彰義隊の主唱者伴門五郎』、『幕末マニュファクチュア論争と蕨の織物業』といった歴史研究に裏打ちされた著作まで、その内容は多岐に渡ります。これらの著作は、蕨の歴史や文化を深く理解する上で貴重な資料となっています。さらに、韮塚一三郎氏との共著『埼玉の先人渋沢栄一』や『わがまち蕨の戦後十五年史』など、郷土史研究への貢献は多大なるものです。

1990年12月19日に逝去。その功績を称え、1991年1月11日には蕨市名誉市民に推挙されました。生前に所有していた旧中山道沿いの自宅は、彼の死後、蕨市立歴史民俗資料館別館として寄贈され、一般公開されています。現在も多くの市民が訪れ、金子吉衛の足跡を偲んでいます。

金子吉衛には、浦和画家の金子徳衛という弟と、NHKアナウンサーの金子哲也という孫がいました。彼の家族もまた、それぞれの分野で活躍しています。

金子吉衛の生涯は、行政における手腕、郷土への深い愛情、そして旺盛な研究心という、三つの要素が織りなすドラマと言えるでしょう。彼の功績は、蕨市の歴史に永遠に刻み込まれることでしょう。

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