井手正敬

井手正敬（いでまさたか、1935年4月3日 - ）は、日本の実業家であり、西日本旅客[[鉄道]]（JR西日本）の社長・会長を歴任した人物です。内閣法制局第一部長や文部次官を務めた井手成三を父に持ち、兵庫県芦屋市に在住しています。

人物

福井県小浜市で生まれ、学習院初等科、学習院中等科を経て、1954年に東京都立戸山高等学校を卒業しました。その後、東京大学経済学部を卒業し、日本国有[[鉄道]]（国鉄）に入社しました。国鉄時代には、葛西敬之、松田昌士とともに「国鉄改革3人組」と称され、国鉄の分割民営化に尽力しました。

1992年にはJR西日本の社長に就任。そのワンマン経営ぶりは社内外で知られ、JR西日本は「井手商会（商店）」とまで呼ばれるほどでした。また、その強引な経営手法から、社内では「（井手）天皇」というあだ名で恐れられていました。後には、第5代社長となる山崎正夫などからも恐れられる存在でしたが、JR福知山線脱線事故後、安全性よりも収益性を優先した経営姿勢が批判を浴び、また、国営時代の体質を改善するために実施された日勤教育の実態が問題視され、相談役を引責辞任しました。

2022年5月、葛西敬之が死去したことにより、国鉄改革3人組の中で唯一の存命者となりました。

批判

JR総連について

2022年10月、井手は産経新聞のインタビューで、国鉄改革時の労使問題に触れ、「北海道と貨物にはまだJR総連の影響力が残っている」と述べました。これに対し、JR総連は「井手による組織破壊攻撃が労使関係を破壊し、安全よりも運行優先・利益優先の職場支配に至った」と反論しました。JR福知山線脱線事故の遠因にもなったと主張しています。

JR東海について

同じく2022年10月の産経新聞のインタビューで、井手はJR東海の葛西敬之がJR東海とJR西日本の合併構想を持っていたと発言しました。しかし、JR東海社長の金子慎は、この合併案は「井手氏の構想」であり、葛西の考えではないと反論しました。さらに、葛西の著書にも「井手氏の構想」と記載されていることを指摘し、井手の発言を批判しました。

JR福知山線脱線事故について

JR福知山線脱線事故後、遺族が井手との面会を求めた際、井手は当初面会に前向きでしたが、JR西日本が井手の「企業風土に問題はなかった」という発言を問題視し、面会は実現しませんでした。その後、井手がJR西日本の子会社に天下りしていたことが発覚し、遺族から強い批判を浴びました。

井手は脱線事故に関して、他の歴代社長と同様に神戸地検より不起訴処分となりましたが、検察審査会により起訴相当と議決され、在宅起訴されることになりました。その後、最高裁判所にて無罪が確定しましたが、井手は経営者としての道義的責任を感じていると述べました。一方で、事故の原因は企業風土にはないと主張しています。また、日勤教育についても、「再教育は当然のこと」とし、草むしりについても「懲罰だけではない」と述べています。

これに対し、JR西日本は井手の発言について「弊社の認識とは全く異なる」と反論しています。

経歴

1959年 - 東京大学経済学部卒業後、日本国有[[鉄道]]に入社。
1984年 - 東京西鉄道管理局長就任。
1985年 - 総裁室審議役兼経営計画室審議役、再建実施推進本部事務局長に就任。
1987年4月 - JR西日本代表取締役副社長就任。
1992年6月24日 - JR西日本代表取締役社長就任。
1997年4月1日 - JR西日本代表取締役会長就任。
2003年 - JR西日本取締役相談役就任。
2006年6月 - JR福知山線脱線事故の責任を取って相談役を退任。
2006年8月 - ジェイアール西日本コミュニケーションズ顧問就任。
2009年7月 - 顧問契約解除。
2009年10月23日 - 神戸第1検察審査会は、井手を起訴すべきだとする「起訴相当」を議決。
2009年12月4日 - 不起訴となるが、検察審査会が自動的に再審査に入る。
2010年3月26日 - 神戸第一検察審査会が再び起訴相当と議決したため、強制的な起訴が決まった。
2010年 4月23日 - 在宅強制起訴される。
2017年6月13日 - 最高裁にて上告を棄却され無罪確定。

また、横綱審議委員会委員、京大経営協議会委員、財団法人大阪体育協会会長、財団法人IAAF世界陸上2007大阪大会組織委員会理事、財団法人日本美術協会理事、関西東大会会長も務めました。

当初、三洋電機の社外取締役に内定していたが、JR福知山線脱線事故のため辞退しています。

テレビ番組

日経スペシャルガイアの夜明け安全神話の崩壊効率主義の先に見えたもの（2005年5月31日、テレビ東京）- JR福知山線の脱線事故 JR西日本の首脳独占インタビュー。

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