金子郁容

金子郁容（かねこ いくよう）氏は、1948年11月22日生まれの日本の工学者であり、教育改革にも貢献した人物です。専門は情報組織論やネットワーク論に深く、これらの分野で多くの研究成果を発表しています。米国スタンフォード大学でPh.D.（オペレーションズ・リサーチ）を取得し、学術的な基盤を築きました。

特に彼の名前が広く知られるようになったのは、教育改革国民会議の委員として、地域と学校が連携する新しい学校運営の仕組みであるコミュニティ・スクールを日本に提唱した功績によります。この提案は、その後の日本の教育制度に大きな影響を与えました。

東京都出身。韓国出身の父と東京出身の母のもとに生まれました。その学歴は慶應義塾に深く根ざしており、幼稚舎、普通部、高等学校を経て、1971年に慶應義塾大学工学部管理工学科を卒業しています。その後、スタンフォード大学で学び、1975年に博士号を取得しました。

職歴においても、国内外の主要大学で教鞭をとっています。1975年からウィスコンシン大学マディソン校で助教授、準教授を務めた後、帰国。1984年からは一橋大学商学部で助教授、教授を務めました。1994年には慶應義塾大学大学院政策・メディア研究科および総合政策学部の教授に着任し、慶應義塾大学湘南藤沢キャンパス（SFC）の中心的な存在となります。慶應義塾大学では、慶應義塾幼稚舎の舎長（校長）、大学院政策・メディア研究科委員長、SFC研究所所長といった重要な役職を歴任しました。2014年からは明治大学経営学部の特任講師を務め、2018年には慶應義塾大学名誉教授の称号を得ています。

専門分野の研究に加え、政策形成やソーシャルイノベーションプログラムにも深く関わり、ネットワークコミュニティゼミを主宰するなど、理論と実践を結びつける活動を展開しています。また、日本テレビの報道番組「バンキシャ」でコメンテーターを務めたほか、長野県教育委員としても活動するなど、社会に対する多角的な発信を行ってきました。

思想家・編集工学者の松岡正剛氏とは親交が深く、松岡氏のイベントにもゲストとして度々参加しています。また、多くの門下生を育成しており、中には国立社会保障・人口問題研究所長を務めた遠藤久夫氏、慶應義塾大学教授の宮垣元氏、一橋大学准教授の大上慎吾氏、東京経済大学准教授の北山聡氏、慶應義塾大学准教授の宮川祥子氏、上武大学特任教授の池田信夫氏、衆議院議員の橋本岳氏など、様々な分野で活躍する人材を輩出しています。

著作活動も精力的に行っており、ネットワーク論や情報社会、ボランティア、コミュニティに関連する多数の単著や共編著を出版しています。

主な著作には、

『ネットワーク時代の企業 LANを超えて』（1985年）
『ネットワーキングへの招待』（1986年）
『ボランティア もうひとつの情報社会』（1992年）
『コミュニティ・ソリューション ボランタリーな問題解決にむけて』（1999年）
『日本で「一番いい」学校 地域連携のイノベーション』（2008年）

共編著には、

『ネットワーク組織論』（今井賢一氏と共著、1988年）
『「つながり」の大研究 電子ネットワーカーたちの阪神淡路大震災』（VCOM編集チームと共編著、1996年）
『コミュニティ・スクール構想 学校を変革するために』（渋谷恭子氏、鈴木寛氏と共著、2000年）

などがあり、その研究対象の広さと社会への問題提起の深さがうかがえます。

情報組織論、ネットワーク論、そして社会と地域、教育の連携といった幅広いテーマにおいて、理論構築と実践の両面から貢献を続けている研究者、教育者です。

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