金子鋭

金子鋭の生涯：銀行家、そしてプロ野球コミッショナーとして

金子鋭は、1900年（明治33年）に生まれ、1982年（昭和57年）に81歳でその生涯を閉じました。彼は銀行家として名を馳せ、富士銀行の頭取、会長を歴任。また、プロ野球コミッショナーとしても、その名を歴史に刻んでいます。特に、ドラフト制度の導入に尽力したことで知られています。

若き日の金子：大正デモクラシーの影響

旧制新潟県立小千谷中学校、旧制第七高等学校造士館を経て、東京帝国大学法学部政治学科を卒業した金子は、大正デモクラシーの時代に学生生活を送りました。蠟山政道や福岡誠一らと社会改良について語り合うなど、筋の通った青年時代を送ったとされています。

銀行家としてのキャリア

1924年（大正13年）に安田銀行（後の富士銀行）に入行した金子は、順調にキャリアを積み重ね、1949年に副頭取、1957年には頭取に就任しました。1963年には会長となり、1975年には顧問に退きました。明治生まれの硬骨なバンカーとして知られ、財界でも活躍しました。

巨人ファンとしての側面と財界での人脈

大の巨人ファンであった金子は、政財界人との後援組織「無名会」を結成し、会長を務めました。このことからも、彼が政財界に深く関わっていたことが伺えます。

プロ野球コミッショナーとしての活動

金子は、1965年（昭和40年）に日本野球機構のプロ野球コミッショナー委員会委員に就任。1969年（昭和44年）には、宮澤俊義委員長、中松潤之助と共に黒い霧事件の対応を審議し、池永正明の永久追放を強硬に主張したとされています。また、ドラフト制度の導入に尽力しました。

1976年（昭和51年）には、大濱信泉の死去に伴い、第6代コミッショナーに就任しました。しかし、1978年の江川事件では、当初「江川が巨人と結んだ契約は無効」と発表したものの、巨人の揺さぶりにより「江川が阪神に入団後、巨人にトレード」という方針に転換。この「朝令暮改」とも言える対応は世間から強く非難され、1979年（昭和54年）にコミッショナーを辞任しました。

金子は、江川事件について最後まで自己弁明の機会を設けなかったとされています。また、晩年に至ってもプロ野球に関する新聞記事を見ることを嫌っていたとも伝えられています。

相撲界への貢献

1957年（昭和32年）には日本相撲協会に請われて設立された運営審議委員会の委員となり、1971年（昭和46年）からは第2代運審委員長を務めるなど、相撲界にも貢献しました。

死去とその後

1982年（昭和57年）2月24日、呼吸不全のため東京医科歯科大学医学部附属病院で死去しました。享年81歳。故郷の小千谷市白山運動公園内には、金子の胸像が建立されています。

エピソード：1978年日本シリーズでの一幕

1978年の日本シリーズ第7戦では、ヤクルトの大杉勝男が放ったホームランの判定を巡り、阪急の上田利治監督が抗議を続けました。金子は、その上田監督に対し試合再開を説得。その際の「（コミッショナーである）わしが（頭を下げて）頼んでも駄目か!」という怒気を含んだ言葉は、テレビ中継で放送され、多くの人に知られることとなりました。しかし、作家の近藤唯之は、この時の金子の態度を「俺の酒が飲めないのか」と部下を責める酔っ払いのようだとして、批判的に評しています。

金子鋭は、銀行家として、またプロ野球コミッショナーとして、その生涯を通じて日本の社会に大きな影響を与えた人物でした。

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