金忠 (忠勇王)

金忠（きん ちゅう）は、生年不詳ながら、宣徳6年8月29日（1431年10月5日）に没した明代の軍人です。その出自はモンゴルにあり、元の名を也先土干（ヤセントガン）と称していました。彼はモンゴルの王子であったと伝えられています。

生涯

也先土干は、当時モンゴルで勢力を誇っていたアルクタイと対立関係にありました。永楽21年（1423年）、明の永楽帝がモンゴル高原への親征を敢行し、上荘堡に到達した際、也先土干は妻子や部下を率いて明軍に降伏しました。明軍は北方深くまで進軍しましたが、遠征の目的であったアルクタイは遠方に逃亡しており、永楽帝は戦果がないことを不満に思っていました。そのため、也先土干の帰順を大いに喜び、彼に「金忠」という姓名を与え、忠勇王に封じました。

永楽帝が軍を帰還させる際、金忠は馬に乗って皇帝に随行し、その質問に誠実に答えました。永楽22年（1424年）、金忠はアルクタイ討伐の先鋒を志願しました。当初、永楽帝はこれを許可しませんでしたが、大同や開平で異民族の侵入警報が相次ぎ、再びモンゴル高原への親征を決意すると、金忠は陳懋（ちん ぼう）と共に先鋒を務めることになりました。しかし、アルクタイは明軍が再び出征したことを察知し、早々に答蘭納木児河（トールン・ノール）を渡って逃走しました。金忠と陳懋は答蘭納木児河に到達しましたが、敵の姿は見当たらず、白邙山まで進軍したものの、敵と遭遇することなく軍を帰還させました。

洪熙帝が即位すると、金忠は太子太保の位を加えられ、二俸を支給されるようになりました。宣徳3年（1428年）、宣徳帝がウリャンカイへの親征を行い、寛河で敵を撃破しました。この時、金忠は把台（はだい）と共に戦利品を献上したいと願い出ました。宣徳帝はこれを許可し、二人は出立しました。帰陣後、彼らは数十人の捕虜と数百頭の馬や牛を献上し、宣徳帝は大変喜びました。皇帝は宦官に金杯で酌をさせ、彼らに御酒を賜りました。宣徳4年（1429年）2月には、金忠は太保の位を加えられ、その功績を称えられました。

金忠は、宣徳6年8月辛酉（1431年10月5日）に生涯を閉じました。

金忠は、明朝に帰順した後も、その軍事的な能力を発揮し、モンゴル討伐に貢献しました。彼の生涯は、明とモンゴルの関係、そして当時の国際情勢を理解する上で重要な事例と言えるでしょう。モンゴル出身でありながら明朝に忠誠を尽くし、その功績が認められた金忠は、歴史に名を刻む人物として記憶されるべきです。

もう一度検索