アルクタイ

アルクタイ：北元を揺るがしたアスト部の族長

アルクタイ（? - 1434年）は、北元時代に活躍したアスト部の族長です。彼は政権内で重要な地位を占め、モンゴル高原の覇権を巡ってオイラトと激しい抗争を繰り広げました。また、明の永楽帝とも敵対し、北元の歴史に大きな影響を与えました。

生涯

1403年、アルクタイはオルク・テムルがハーンに即位すると、知院という官位に就きました。しかし、1408年にはオルク・テムルを廃位し、ティムール帝国から帰国したオルジェイ・テムルを新たなハーンとして擁立しました。この頃から、新興勢力として台頭してきたオイラトとの間で、モンゴル高原の覇権を争うようになります。

アルクタイは、明の国境地帯にも度々侵入し、永楽帝との関係も悪化させました。1409年には、オイラトとの戦いに敗れてヘルレン川へ逃れましたが、直後に明の軍人である丘福率いる10万の軍勢による征討を受けます。しかし、オルジェイ・テムルと共に伏兵を仕掛け、明軍を壊滅させるという大戦果を挙げました。

1410年、永楽帝が自ら親征を行うと、アルクタイは明軍の攻撃を避けるために西進を主張するオルジェイ・テムルと対立し、北元はオルジェイ・テムル派とアルクタイ派に分裂しました。オルジェイ・テムルはオノン川で大敗を喫し、アルクタイもハルハ川上流の戦いで永楽帝に敗れましたが、明軍は彼を捕らえることができませんでした。

同年の冬から、アルクタイは独自に明へ朝貢を始めました。オルジェイ・テムルの死後も頻繁に朝貢を行い、永楽帝の歓心を得て、ハルハ川の戦いで捕虜となった兄妹を返還されました。さらに、永楽帝から和寧王の地位を与えられました。

1414年の永楽帝の第2次親征では、明軍と共にオイラトを破り、1416年にはオイラトの有力者であったマフムードを殺害してオイラトを圧迫しました。しかし、再び明の国境地帯に侵入したことがきっかけとなり、1422年の永楽帝の第3次親征を招きました。明軍がアルクタイの本拠地であるフルンボイル地方に進むと、彼は家畜や輜重を捨てて逃亡しました。

永楽帝はその後も2度にわたり親征を行いましたが、アルクタイを捕らえることはできませんでした。永楽帝が亡くなると、マフムードの子であるトゴンの逆襲を受け、アルクタイは壊滅的な打撃を受けました。部衆は離散し、明に帰順する者も現れ、アルクタイはモンゴル高原東部のウリヤンハイ三衛のもとへ逃れて再起を図りました。

明側は、降伏した者たちに官職や金品を与えて厚遇し、諸将は弱体化したアルクタイの討伐を主張しましたが、洪熙帝は遠征の進言を容れず、土木の変に至るまで大規模な北征は行われませんでした。

ウリヤンハイ三衛を支配下に置いたアルクタイは、オルク・テムルの遺児であるアダイを奉じて再起し、トクトア・ブハを擁立するオイラトと争いました。しかし、1434年にトクトア・ブハの攻撃を受けて大敗し、妻子を殺害され、家畜も奪われました。敗戦後、彼に従っていたのは子の失捏干のみとなりました。同年、アルクタイはトゴンによって失捏干と共に殺害されました。彼の死後、子の阿卜只俺と孫の妻である速木答思は明に亡命し、宣徳帝は彼らを厚遇しました。

『蒙古源流』におけるアルクタイ

年代記である『蒙古源流』では、アルクタイは元の名前をオゲデレクといい、オイラトの丞相バトラの奴婢として召し抱えられ、アルクタイと名付けられたとされています。その後、アダイのハーン擁立に協力して太師の地位を与えられ、かつて自分を虐待したバトラの子であるバクムを奴隷とし、トガンと名付けたと記されています。

『蒙古源流』におけるアルクタイに関する記述はここで終わり、帰国したトガンがアダイを討つくだりに続きます。『蒙古源流』では、アダイが即位する前のアルクタイの地位は低く、オルジェイ・テムルの擁立や永楽帝との戦争への関与については書かれていません。

アルクタイは、北元末期のモンゴル高原において、激動の時代を生き抜いた人物です。彼の生涯は、北元の衰退と、新たな勢力であるオイラトの台頭を象徴するものと言えるでしょう。

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