金性俊

金性俊（キム・ソンジュン）

韓国のプロボクサー、金性俊（キム・ソンジュン、朝鮮語: 김성준）は、1953年6月3日に釜山市で生を受け、WBC世界ライトフライ級王者としてボクシング史にその名を刻みました。しかし、その生涯は輝かしい栄光と、その後の過酷な現実、そして悲劇的な最期という、波乱に満ちたものでした。1989年2月3日、わずか35歳でこの世を去った彼のキャリアと人生を振り返ります。

キャリアの軌跡

金性俊のプロボクサーとしての道は、1971年12月28日、韓国のリングで始まりました。地道にキャリアを積み重ね、1975年8月31日にはプロ11戦目にして韓国ライトフライ級王座を獲得。この王座を2度防衛した後に一度手放しますが、1977年1月22日には再び戴冠し、さらに1度の防衛に成功するなど、国内での実力を確固たるものにしました。

次なる目標は、東洋太平洋の頂でした。1978年1月26日、プロ25戦目でOBF（現在のOPBF）東洋ライトフライ級王者だった鄭相一に挑戦。激しい攻防の末、12回判定勝ちを収め、東洋太平洋王座を手に入れます。その初防衛戦では、日本の強豪、天龍数典と対戦。僅か3回での鮮やかなノックアウト勝利を飾り、その強打を見せつけました。しかし、続く2度目の防衛戦では、王座を奪った鄭相一との再戦に臨みますが、12回判定負けを喫し、タイトルを失いました。

世界王座への挑戦と栄光

東洋太平洋王座陥落からわずか2ヶ月後、金性俊はキャリア最大のチャンスを迎えます。1978年9月30日、プロ30戦目にして、ついに世界初挑戦の機会を得たのです。相手はWBC世界ライトフライ級王者、ネトルノイ・ソー・ボラシング。この大一番で、金性俊は彼のボクシングキャリアにおける最高潮とも言えるパフォーマンスを発揮します。試合は序盤から金性俊のペースで進み、わずか3ラウンドという早い回に鮮烈なノックアウト勝利を飾り、念願のWBC世界ライトフライ級王座に就いたのです。このKO劇は、彼の名を世界に知らしめました。

世界王者となった金性俊は、1979年に3度の防衛戦を行い、いずれも退けて王座を守り抜きました。しかし、1980年1月3日に行われた4度目の防衛戦で、日本の技巧派ボクサー、中島成雄と対戦。15ラウンドに及ぶ壮絶な戦いの末、判定負けを喫し、約1年3ヶ月保持した世界王座から陥落しました。

王座陥落後の苦闘、そして引退

世界王座を失った後も、金性俊は再び頂点を目指しリングに上がり続けました。1980年5月9日には、後にIBF世界スーパーバンタム級王者となる李承勲と対戦しますが、判定で敗れます。さらに同年7月28日には、1階級上のWBC世界フライ級王者、大熊正二に挑戦。2階級制覇を目指しましたが、これも15回判定負けに終わり、栄光を再び掴むことはできませんでした。キャリアの晩年には、ミゲル・カントやラファエル・オロノといった名だたる強豪選手とも拳を交えましたが、勝利を収めることは叶いませんでした。

そして、1982年7月11日の試合を最後に、金性俊は現役を引退しました。プロキャリア通算成績は、36勝（13KO）6敗1分というものでした。

引退後の悲劇と最期

華やかなリングを降りた後の金性俊の人生は、困難の連続でした。長年のボクシングキャリアがもたらしたパンチドランカー症状に苦しめられた他、経済的な困窮にも直面し、厳しい生活を送っていたと伝えられています。栄光を知る元世界王者が、社会の片隅で孤独な闘いを強いられていたのです。

そして、その苦悩の末、1989年2月3日、ソウル市内でビルから飛び降り、自らの命を絶ちました。享年35歳。若すぎる悲劇的な死は、多くの関係者やファンに衝撃と悲しみを与えました。リング上での輝きとは裏腹に、孤独の中で悲劇的な結末を迎えた金性俊の生涯は、ボクサーが直面しうる厳しい現実を浮き彫りにしています。

獲得タイトル

第3代OBF東洋ライトフライ級王座（防衛1度）
WBC世界ライトフライ級王座（防衛3度）

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