金星 (エンジン)

金星エンジンの概要

金星（きんせい）は、第二次世界大戦中に三菱重工業の名古屋航空機製作所で開発された空冷星型エンジンです。このエンジンは、深尾淳二技師を中心に制作されたもので、社内ではA8という呼称で知られていました。海軍の主力エンジンとして多くの戦闘機に搭載され、後に陸軍機にも採用されました。特に大戦後期には、陸軍のハ112型エンジンとしても利用されるようになり、陸海軍統合名称はハ33とされました。

開発の背景

金星の開発は、三菱が水冷エンジンに頼っていた時代から始まります。多くの問題を抱えていた水冷エンジンは、特に650馬力型では頻繁に故障が発生し、実用に耐えないとの評価を受けました。そのため、空冷エンジンの開発が求められました。1931年にはA4という空冷星型エンジンの試作機が登場しましたが、これもまた多くの不具合に見舞われました。

深尾淳二技師は、水冷エンジンの欠点を克服するため、空冷エンジンの開発を選択しました。1934年にはアメリカのP&W R-1690ホーネットの製造権を取得し、『明星』として生産し参照しながらエンジンの改良を進めました。

金星エンジンの設計

金星エンジンの設計は、当時の他のエンジンメーカーの技術を取り入れ、1935年12月に設計が開始され、わずか3ヶ月後の1936年3月に試作機が完成しました。直ちにテストが行われ、軍の要求に応える形で正式に制式採用されました。テストの際の優れた信頼性が認められ、金星発動機三型として海軍に採用されることになりました。

その後も新型エンジンは開発され、高馬力化が進むとともに、金星エンジンは三菱航空機の基幹エンジンとなりました。特に金星四型や五型では多くの改良が施され、それぞれの型が海軍機に幅広く採用されました。

特徴と技術的革新

金星エンジンのボア・ストロークは、140mm × 150mmの寸法で設計されており、これは以前に製造されていた他のエンジンと類似しています。この設計理念により高い信頼性が確保されました。また、吸排気のバルブを動かすプッシュロッドの配置や機構も工夫され、高回転時の性能向上に寄与しました。

さらに、後に開発された瑞星や火星エンジンは金星と部品を共有しながら、それぞれ特性を持たせた設計となっています。特に火星はボア・ストロークを拡大し、瑞星はショートストロークによって小型化が図られました。

型式別の詳細

金星エンジンは様々な型式がありますが、その中でも特に注目されるのは以下の通りです。

• - 金星一型 (A4-Rb): 初期モデルで、バルブカムが後方に配置されていますが、冷却に問題がありました。
• - 金星三型 (A8a): カムの位置が改良され、信頼性が高く、正式に採用。
• - 金星四型 (A8c): 性能向上が図られ、多くの新技術が導入されました。

特に金星五型以降はますますの機能向上がなされ、海軍機における運用が進みました。例えば、金星五型（ハ112I）は性能強化が施されており、様々な改良が加えられています。

結論

金星エンジンは、機械技術の進化を反映したものであり、航空機に多大な影響を与えました。その信頼性、出力向上の技術革新は、戦時下の航空機運用においても重要な役割を果たしました。金星エンジンの成功は、三菱重工業の航空エンジン技術の基礎を築くこととなり、以降の日本の航空機産業における重要な礎となったのです。

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