金樹仁

金樹仁の生涯と新疆統治

金樹仁（きん じゅじん）は、中華民国時代の新疆省において重要な役割を果たした政治家です。1879年に甘粛省の蘭州府河州金家嘴で生まれ、彼の青年時代や教育背景は多くの同時代の政治家同様に不明ですが、1914年には新疆に赴任し、政治の舞台に立つこととなりました。

当初、金は楊増新政権のもとで地方長官を歴任し、1926年には政務庁長に昇進します。その後、1928年に楊増新が暗殺されると、彼は樊耀南を逮捕し、瞬く間に新疆省の実権を手に入れました。同年11月17日には国民政府から正式に新疆省政府主席に任命され、金樹仁の政権が始まります。

彼の5年間の新疆での統治は、腐敗と圧制が色濃く、民族や宗教問題が表面化する時期でもありました。楊増新の政権下で控えめに抑えられていたこれらの問題は、彼の登場によって一気に噴出しました。金は漢人官吏を重用し、ムスリム住民との関係を悪化させる一方で、屠畜税の導入やメッカ巡礼の禁止といった政策を実施しました。これにより、ムスリムの信仰心や文化的権利が脅かされ、地元の人々から強い反発を受けました。

さらに、金樹仁は清朝時代から自治権を有していたハミのムスリム郡王家を廃止する「改土帰流」という政策を推進し、これにより現地社会のエリート層からも反発を招く結果となりました。1920年代初頭、ハミのムスリム住民はホージャ・ニヤズを中心とした反乱を計画し、甘粛省の軍閥指導者である馬仲英に支援を要請しました。この要請を受けて、トゥルファンやホータンでもムスリムによる反乱が起こるなど、金の統治に対する不満が一気に広がりました。

1933年には、金樹仁の政権を揺るがす事件が発生しました。省政府傘下の白系ロシア人部隊や漢人官吏によるクーデターが起こり、教育庁長の劉文竜が省政府の臨時主席に就任します。これにより金は失脚し、再び権力を取り戻すために軍事力を背景に活動しましたが、盛世才の反乱の影響でタルバガタイに撤退せざるを得なくなりました。最終的に、彼はソ連に亡命することとなります。

その後、シベリアを通って南京に戻るも、国民党政府のアルプテキンに告発され、入獄します。1935年に釈放された後は、自らの故郷である甘粛省の蘭州で静かに日々を過ごしました。

金樹仁の物語は、中華民国時代の波乱に満ちた出来事を反映しており、彼の統治は単に一政治家の権力掌握の歴史だけでなく、地域の民族や宗教の複雑な関係も物語っています。このような歴史的な背景を持つ金樹仁の存在は、今なお多くの人々の記憶に残り、学問的な研究の対象とされています。

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