改土帰流

改土帰流（かいどきりゅう）

改土帰流は、元代から清代初期にかけて、中国における地方原住民の支配構造を大きく変えた政策のことです。この政策は、「土司制度」と呼ばれる地方統治のシステムを徐々に廃止し、王朝の中央政府が直接介入する体制へ移行することを目的としていました。これにより、科挙に合格した官僚である「流官」が原住民地域に派遣され、より厳格に統治が行われるようになりました。

「改土帰流」以前の状況

「改土帰流」の概念が形成される前、甘粛省や青海省、四川省西部、昌都地区、さらにはチベット圏などには、古くからチベット族やその他の少数民族（ミャオ族、ヤオ族、ロロ族など）が居住していました。元代の初めに、これらの原住民は部族ごとに分類され、政令を受け入れ、朝貢や納税を行うことが求められました。そして、彼らのリーダーには中国の官職名が与えられ、土司（あるいは土官）として原住民を統治する権限が与えられ、これが世襲される形となりました。この間接的な統治システムは、元代から明代、清代にかけて次第に整備されていきました。

明・清代の「改土帰流」

明代に入り、土司制度が設けられた地域では、中国人（漢民族）の移住者が増加し、漢文化の影響が強まりました。その中で、漢民族の経済的な圧迫が原住民の反発を招き、多くの反乱が発生しました。これを受けて、中央政府は「流官」による直接的な支配を強化する「改土帰流」に着手しました。

この政策の大きな違いは、土司・土官が原住民の慣習を法律とし、中央政府に対して限られた義務しかないのに対し、流官は国家の官吏として法令に従った明確な権限と義務を持っていた点です。流官は戸籍作成、租税の徴収、学校設立、科挙の実施など、すべてにおいて中央政府の方針に従い、フラットな行政を行いました。

清代に入ると特に雍正年間（1726年から1731年）には、多くの土司が反乱、法律違反、後継者不在、土地申請などの理由で次々に廃止されました。乾隆年間以降、貴州省での「改土帰流」が完了し、中国人（漢民族）による地域民の同化政策も進められました。

中華民国時代の「改土帰流」

中華民国期においては、北洋政府は清代から引き続き内外のモンゴルに特権を与える中で、チベットのダライ・ラマなどの称号も承継しました。しかし、南西部の少数民族地域では、徐々に「改土帰流」が進められ、1923年時点でも甘粛省や四川省などには478人の土司が残っていました。

このように「改土帰流」は、長い歴史の中での様々な政策の積み重ねを背景に持ち、明確な地方統治の変化をもたらした制度であることが分かります。

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