金沢孝史

金沢孝史：波瀾万丈の棋士人生

1973年生まれ、北海道札幌市出身の金沢孝史六段。勝浦修九段門下として1985年、奨励会に入会しました。同期には、木村一基、野月浩貴、屋敷伸之といったそうそうたるメンバーが名を連ねています。特に野月、屋敷とは同郷で、幼少期から札幌で将棋を指し合っていた間柄でした。

奨励会時代は、15歳で初段、17歳で三段と順調に昇段。しかし、三段リーグには17期も在籍し、年齢制限間近での四段昇段となりました。この経験は、彼を深く悩ませたようです。自身より先に昇段した棋士たちへの悔しさ、焦燥感が、当時の彼の心境を如実に表しています。

プロ入り後も、順風満帆とはいきませんでした。王位戦リーグ入りを果たしたものの、全敗を喫するなど苦戦が続きました。特に、屋敷伸之との対局では、4時間46分もの大長考を行い話題を呼びました。順位戦では、C級2組に長く留まり、降級点の累積によりフリークラスへ転出。しかし、フリークラス転出後も、2006年度から2007年度にかけては好成績を収め、8連勝を2回記録するなど、高い実力を見せつけました。

2018年には、当時叡王だった高見泰地に勝利。順位戦で昇級歴がないままフリークラス宣言した棋士がタイトルホルダーに勝つのは、13年ぶりの快挙でした。この勝利は、彼の潜在能力の高さを改めて示すものとなりました。

しかし、金沢孝史の棋士人生は、順風満帆とは言い難いものでした。2001年から2005年にかけて、対局の遅刻や不戦敗を繰り返すという不祥事を起こしました。結果、日本将棋連盟から公式戦出場停止処分を受けることとなり、多くの棋戦への出場を断念せざるを得ませんでした。

2011年には、王将戦一次予選で振り駒の後手番にも関わらず、初手を指してしまったという、珍しい反則負けを経験しています。また、NHK杯戦は21回出場し全て予選敗退という記録も残しています。

2017年には、昼食休憩中に外出するという対局規定違反により、厳重注意と罰金処分を受けました。

2021年3月末でフリークラス在籍期限が満了し、同年5月17日、現役を引退しました。引退時、彼は31歳という若さでした。

彼の棋風は、矢倉囲いを好む居飛車党。しかし、大駒の捌きよりも小駒を効率的に使った攻めを得意とし、終盤の受けにも定評がありました。一方で、攻めにくい局面では、序中盤で早々に投了することも少なくありませんでした。また、奇襲戦法「金沢流」の考案者としても知られています。定跡にとらわれない、独自の戦法を好む棋風も、彼の魅力の一つでした。

186cmの長身も、将棋界では特筆すべき点です。

金沢孝史の棋士人生は、華々しい活躍だけでなく、苦悩や失敗も経験した波瀾万丈なものでした。しかし、その経験は彼を成長させ、独自の棋風を確立させる原動力となったことは間違いありません。彼の存在は、後進の棋士たちにとっても、大きな刺激となるでしょう。

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