金睿智

金睿智：ピアニストから国会議員へ、障害と共に歩む人生と政治活動

金睿智（キム・イェジ）氏は、韓国で活躍する稀有な存在だ。先天的な視覚障害を乗り越え、ピアニスト、スポーツ選手、発明家として才能を開花させ、やがて政界へと進出。韓国国会議員として、障害者を含む社会的弱者への理解と支援を訴え続けている。

音楽への情熱と革新

幼少期から視覚障害を抱える金氏は、聴覚を研ぎ澄まし、ピアノの道を歩んだ。淑明女子大学校、ウィスコンシン大学マディソン校での研鑽を経て、類まれなピアニストとして成長。100回を超える演奏会を開催し、2018年平昌パラリンピック閉会式でも演奏を披露した。

演奏活動に加え、金氏は障害者音楽教育の改善にも尽力している。点字楽譜の限界を克服するため、3D触覚楽譜を発明。この功績により、2019年には障害者賞を受賞した。彼女の活動は、障害を持つ人々の音楽へのアクセスを大きく広げるものとなった。

スポーツへの挑戦

音楽活動と並行して、金氏はスポーツにも積極的に参加している。全国障害者体育大会では、タンデム自転車、クロスカントリースキー、バイアスロンなど、様々な種目で活躍。2020年の全国障害者冬季体育大会では、クロスカントリースキーとバイアスロンでメダルを獲得する快挙を成し遂げた。

国会議員としての活動と主張

2020年の第21代総選挙で、保守政党から比例代表で当選。国会議員となった金氏は、文化体育観光委員会に所属し、政策立案にも携わっている。2023年には国民の力の指名職最高委員に任命された。

彼女の政治活動は、自身の経験に基づいた障害者への理解促進、そして社会的弱者への支援に重点が置かれている。「真の保守は社会的弱者と共にする」という信念の下、チャリティーではなく、法整備による社会保障の充実を訴えている。

盲導犬「ジョイ」とのエピソードも有名だ。国会での盲導犬同伴を巡る議論を経て、金氏の努力により、国会はよりバリアフリーな空間へと変化した。この経験は、金氏の活動の象徴と言えるだろう。

国会での活動においては、障害者差別撤廃デモへの参加、発達障害者家族の悲劇に対する弔意表明など、様々な社会問題に積極的に関与している。また、党の指針に反して「看護法」に賛成票を投じたり、「家族構成権3法」の発議に参加したりするなど、独自の政治姿勢を示している。2023年6月には、盲導犬「ジョイ」と共に国会での対政府質問に臨み、障害者虐待犯罪の厳罰化などを強く訴えた。

未来への展望

金睿智氏の活動は、単なる政治活動の枠を超えている。障害者として、音楽家として、スポーツ選手として、そして政治家として、多様な経験と才能を活かし、社会を変革しようとする彼女の姿勢は、多くの人々に勇気と希望を与え続けている。彼女の今後の活動、そして韓国社会における障害者への理解の深まりに、大きな期待がかかる。

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