金鵄

金鵄（きんし）

金鵄は、日本の古文書『日本書紀』に記されている霊的な存在であり、神武天皇が日本を建国する際に登場する金色の鵄です。この鵄は、神武天皇が東方への征討を進める中で、彼に光を与え、威光によって敵軍をかく乱させたとされています。

概要

『日本書紀』において、金鵄は彦火火出見（後の神武天皇）が長髄彦との戦闘中に現れます。その瞬間、金色の霊鵄が天皇の弓に止まり、その光によって敵の目を眩ませ、結果として神武天皇軍の勝利に貢献したとされています。このように、金鵄は特に戦勝の象徴として広く認識されています。

興味深いことに、『古事記』では金鵄は登場しないため、しばしば八咫烏と結びつけて考えられています。八咫烏は神武東征の際に行動を共にした霊的な鳥であり、これら二つの存在が同一かどうかは明確ではありません。それでも、金鵄は日本の建国に深く関与した霊的な存在として、吉事や勝利を象徴する役割を果たしてきました。特に大日本帝国時代には、金鵄をモチーフにした勲章や意匠が多く採用されました。

平安時代以降、賀茂神社では金鵄と八咫烏の両方が賀茂建角身命の化身とされ、共に「金鵄八咫烏」という名で祀られています。これは、この二つの霊鳥が重要な信仰の対象であることを示しています。

霊鵄形大錦旛

霊鵄形大錦旛は、天皇の即位の儀式で用いられる特別な旗で、金色に輝く金鵄が刺繍されています。この旗は、八咫烏形大錦旛と対になっており、共に太陽と月の象徴である日像纛旛、月像纛旛に次ぐ重要な位置を占めています。即位の礼において、その意味が重視されることが理解できます。

金鵄の利用

明治以降、金鵄はその伝説的な背景から縁起の良いシンボルとして多岐にわたって商品に利用されています。特に日本酒では、金鵄に由来する名前を持つ銘柄が多く存在し、具体例としては金鵄盃酒造やキンシ正宗の「金鵄正宗」が挙げられます。これらの酒は、賀茂御祖神社に献上されていることから、金鵄の信仰と結びついています。

さらに、紙巻きたばこの「ゴールデンバット」は、戦時中に「金鵄」という名称に変更されていました。この時期、美術的なデザインも神武天皇の弓を取り入れていたものの、改変の必要が生じた経歴があります。一方で、金トビ志賀という製粉製麺業の創業者は、空を舞うトビの姿に事業の夢を重ね、最高品質の小麦粉を「金トビ」と名づけました。

まとめ

金鵄は、日本の独特な文化や神話に深く根ざした存在であり、勝利や吉事のシンボルとして、現代においても様々な形で受け継がれています。神武天皇との結びつきや霊的な意味は、今も多くの人々に尊重されているのです。

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