金龍丸 (特設巡洋艦)

金龍丸：商業航海なき軍艦の生涯

1938年、川崎造船所で建造された貨物船「金龍丸」は、国際汽船の所有ながら竣工と同時に日本海軍に徴用されました。同型船の「金華丸」が太平洋を高速航行する中、「金龍丸」は商業航海を経ることなく、軍艦としての道を歩むことになります。

当初は特設運送船として分類され、3年間の活動の後、特設巡洋艦へと転籍。「金龍丸」は、第四艦隊に所属し、同じく特設巡洋艦「金剛丸」と共に、陸戦隊を乗せトラック諸島に進出しました。1941年12月8日、太平洋戦争開戦。ウェーク島攻略作戦に参加した「金龍丸」は、激しい戦闘の中で、上陸作戦支援や艦砲射撃を行いました。激しいアメリカ軍の反撃により作戦は一時中止となりましたが、その後、上陸用設備の改良を経て、第二次攻略戦でも重要な役割を果たし、ウェーク島の攻略に貢献しました。

1942年1月にはカビエン攻略戦にも参加し、陸戦隊の上陸支援や戦利品の輸送に従事。その後もニューブリテン島での戦闘や、ナウル・オーシャン島攻略戦に参加するなど、太平洋各地で活躍しました。5月には旗艦の曳航中に座礁するアクシデントに見舞われましたが、無事に復旧。佐世保で整備を受けた後、ガダルカナル島の戦いに投入されます。

ガダルカナル島への増援輸送作戦において、「金龍丸」は横須賀鎮守府第五特別陸戦隊を乗せ、トラック島から出撃。しかし、8月20日、アメリカ機動部隊を発見。一時退避の後、第二次ソロモン海戦に遭遇します。この海戦において、「金龍丸」はアメリカ軍機からの攻撃を受け、船体後部に爆弾が命中。大火災が発生し、航行不能に陥りました。弾薬庫への延焼の危険性から、処分が決定され、救援に来た駆逐艦「睦月」も爆撃を受け損傷。最終的に「金龍丸」は魚雷攻撃を受け、8月25日に沈没しました。乗員や陸戦隊員は他の艦艇に救助されました。「金龍丸」は商業航海一度も経験することなく、激戦の中でその生涯を終えたのです。

艦長と監督官の変遷

「金龍丸」の艦長と監督官は、その艦歴を通して幾度となく交代しました。監督官は草川淳大佐から始まり、浜屋七平大佐、塚越彦太郎大佐、日台虎治大佐、板垣行一大佐と続き、艦長には山田省三大佐が就任しました。これらの指揮官たちは、「金龍丸」の激動の艦歴を共にし、その歴史に名を刻んでいます。

史料

本稿の作成にあたり、以下の史料を参考にさせて頂きました。

アジア歴史資料センター（防衛省防衛研究所）
川崎重工業（編）『川崎重工業株式会社社史 年表・諸表』
岡田俊雄（編）『大阪商船株式会社八十年史』
財団法人海上労働協会（編）『復刻版 日本商船隊戦時遭難史』
* その他、多数の文献・資料

これらの史料は、「金龍丸」の建造から沈没に至るまでの詳細な艦歴を明らかにする上で貴重な情報源となりました。特に、当時の戦闘記録や日誌は、その激戦の様子を克明に伝えています。

結論

「金龍丸」は、商業航海を経ることなく、日中戦争と太平洋戦争を戦い抜いた特設艦でした。ウェーク島攻略戦やガダルカナル島への増援輸送など、数々の重要な作戦に参加し、その活躍は日本海軍の作戦に大きく貢献しました。しかし、第二次ソロモン海戦での戦没は、その短いながらも激動に満ちた生涯の幕を閉じました。「金龍丸」の艦歴は、太平洋戦争における日本海軍の活動、そして戦争の悲劇を象徴的に物語るものです。

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