北上山地

北上山地

北上山地は、岩手県の中央部を南北に縦断する山地で、その大部分が岩手県に属しています。東側は太平洋に面し、特徴的なリアス式海岸を形成しており、その景観は非常に美しいです。西側には北上川が流れ、この川との境界が北上山地の西端となっています。最高峰は標高1917mの早池峰山で、日本百名山の一つにも数えられています。

地理

北上山地は、東に太平洋、西に北上川と馬淵川が作る低地帯に挟まれています。この山地を境に、西側は北上盆地、東側は三陸海岸となります。山地の北端は青森県南東部の階上岳付近、南端は宮城県の牡鹿半島まで続いています。

かつては、人口が少なく交通の便も悪かったため、「日本のチベット」とも呼ばれていました。しかし、その秘境のような風景と手付かずの自然は、近年多くの人々を魅了しています。

地勢

地形の形成史

地質学的に見ると、北上山地は古生代と中生代の地層が広く分布しています。特に、最高峰である早池峰山を中心とした早池峰構造帯は、山地を南北に大きく分けています。

南部北上帯は、最も古い先シルル系の基盤を持ち、シルル紀からデボン紀にかけてサンゴが生息するような温暖な浅海でした。この地層は日本最古の部類に属しており、その後の地殻変動で北上し、北部北上山地と衝突したと考えられています。一方、北部の葛巻-釜石帯と安家-田野原帯は、古生代の基盤にジュラ紀の地層が付加されて形成されました。

早池峰構造帯は、オルドビス紀からシルル紀にかけての海洋性地殻が、南部北上帯と北部の地塊の衝突によって隆起したものです。その後、白亜紀前期には大島造山運動が起こり、山地全体が花崗岩によって貫かれました。この頃に北上山地の原型が形成されました。

古第三紀まで、北上山地は大陸縁辺に位置し、ロシアの沿海州と一体でした。しかし、その後の地殻変動によって、阿武隈山地との間に断層が発生し、東西に引き離されました。約3000万年前から1500万年前にかけて日本列島が大陸から分離し、北上山地は一つの大きな島となりました。

奥羽山脈が隆起を始めたのは、後期中新世に入ってからです。これにより、北上山地との間に北上盆地が形成されました。北上山地は新生代を通じて陸地であったため、長年の浸食作用と最終氷期の周氷河作用により、現在のなだらかな地形が作り上げられました。

地震と火山

北上山地は、東に日本海溝があるものの、地震の影響が比較的少ない地域です。これは、地震が主に潜り込み面に沿った海底や、奥羽山脈以西で多発するためです。また、奥羽山脈の東側には火山列がありますが、北上山地には入っていません。

気候

奥羽山脈が西にあるため、北上山地は積雪量が少なく、冷涼な気候となっています。夏は涼しく過ごしやすい一方、冬は寒さが厳しくなります。

主な山

階上岳（はしかみだけ）740 m
安家森（あっかもり）1239 m
黒森山（くろもりやま）837 m
早池峰山（はやちねさん） 1917 m
五葉山（ごようさん）1351 m
室根山（むろねやま）895 m
大森山（おおもりやま）750 m
徳仙丈山（とくせんじょうさん）711 m
田束山（たつがねさん）512 m

鍾乳洞

安家洞
龍泉洞
幽玄洞

主な河川

北上川
久慈川
小本川
閉伊川
早瀬川
盛川

渓谷

久慈渓谷（久慈川）
猊鼻渓（砂鉄川）

産業

鉱業

北上山地はかつて東北有数の鉱産地帯でした。釜石鉱山では鉄や銅が、田老鉱山では銅、鉛、亜鉛が採掘され、その他にも金や石灰石など、多様な地下資源が産出されました。

林業

豊富な森林資源を活かした林業も盛んです。木材の生産だけでなく、森林の保全にも力が入れられています。

観光

遠野は民話のふるさととして知られ、多くの観光客が訪れます。また、龍泉洞などの鍾乳洞は、その神秘的な美しさで観光客を魅了しています。

交通

鉄道

JR東日本山田線
釜石線
大船渡線

主要道路

縦断軸：国道340号
横断軸：国道395号、国道281号、国道455号、国道106号、国道283号（釜石自動車道）、国道107号、国道343号、国道397号、国道284号

脚注

参考文献

日本の地質「東北地方」編集委員会『日本の地質』第2巻（東北地方）、共立出版、特装版1993年。初版は1989年。
小池一之・田村俊和・鎮西清高・宮城豊彦・編『日本の地形』第3巻（東北）、東京大学出版会、2005年。

関連項目

山地
北上川
山脈と山地の一覧#日本
早池峰国定公園
阿武隈高地

外部リンク

* 岩手県の地形・地盤

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