鈴木俊哉

鈴木 俊哉（すずき としや）

1961年、愛知県西尾市に生まれた鈴木俊哉は、日本のリコーダー奏者として、現代音楽を中心に国内外で活躍しています。

音楽的背景と初期の歩み

少年時代、鈴木氏は叔父からリコーダーの基礎的な教えを受けました。これが彼の音楽人生の出発点となります。高校生になると、その才能は頭角を現し、1977年には全日本リコーダーコンクールの高校部門で優秀な成績を収めました。その後、リコーダー奏者の花岡和生氏に師事し、さらに専門的な技術と音楽性を磨きました。

オランダでの研鑽

より深い音楽の探求を目指し、鈴木氏は1982年にオランダへ渡ります。アムステルダムにあるスヴェーリンク音楽院（現アムステルダム音楽院）に留学し、現代リコーダー演奏の第一人者であるワルター・ファン・ハウヴェ氏に師事しました。この留学期間は、鈴木氏にとって演奏家としての基盤を確立する重要な時期となりました。厳しい研鑽を積み重ねた結果、1991年に音楽院を優秀な成績で修了し、ソリストディプロマを取得しました。

国際的な演奏活動と現代音楽への貢献

音楽院修了後も、鈴木氏はアムステルダムに活動の拠点を置き続け、国際的な舞台で精力的に演奏活動を展開しました。ダルムシュタット夏季現代音楽講習会や国際現代音楽協会「世界音楽の日々」といった権威ある音楽祭やワークショップに招聘され、その演奏は高く評価されました。

日本においても、1992年に本格的なリサイタルデビューを果たし、以降、秋吉台国際20世紀音楽セミナー&フェスティバルや武生国際音楽祭など、日本の主要な音楽祭にも度々招かれ、活発な演奏活動を展開しました。

鈴木氏の活動の核となっているのが、現代音楽への深い傾倒です。彼は多くの現代作曲家と協力し、新たなリコーダー作品の委嘱や世界初演に継続的に取り組んでいます。これまでに、中村斉、野村誠、伊藤弘之、徳永崇、大村久美子といった多様な作曲家たちの作品を世に送り出してきました。この活動は、リコーダーという楽器の表現領域を現代音楽の文脈で拡張し、その可能性を追求する重要な試みとなっています。

また、伝統楽器である笙の奏者、宮田まゆみ氏との共演を2001年から開始するなど、異種楽器とのアンサンブルにも積極的に取り組み、新たな音響空間の創造にも挑戦しています。

評価と栄誉

1998年に秩父ミューズパーク音楽堂で行われたリサイタルの演奏を収録したCD『鈴木俊哉リコーダーリサイタル』（2001年、MusicScape）は、音楽専門誌である『レコード芸術』や『stereo』、そして全国紙『朝日新聞』など、複数のメディアでその芸術性の高さが絶賛され、大きな注目を集めました。

2002年には、かつて自らも参加したダルムシュタット夏季現代音楽講習会で講師を務め、次世代の演奏家育成にも貢献しました。2003年からは活動の拠点を日本に移し、国内での活動をより一層深めています。

音楽学者の伊東信宏氏は、鈴木氏の芸術について言及し、「リコーダー音楽の世界において、彼に取って代わる存在はいない、独自の高みに達している」とその境地を高く評価しています。

こうした長年の功績が認められ、2006年には、松平頼暁氏、野坂惠子氏と共に、日本の音楽界に貢献した個人に贈られる権威ある賞、第24回中島健蔵音楽賞を受賞しました。この受賞は、鈴木氏が現代リコーダー音楽の分野で築き上げた独自の地位と、その革新的な演奏活動が広く認められた証と言えるでしょう。彼は現在も、リコーダーという楽器の持つ多様な可能性を探求し続け、国内外で影響力のある活動を展開しています。

もう一度検索