鈴木哲 (野球)

鈴木哲（すずき てつ）氏は、1964年1月22日に福島県で生まれた、日本の元プロ野球選手であり、現在は指導者としても活動しています。現役時代には投手としてプレーし、1988年のソウルオリンピックでは野球日本代表として銀メダル獲得に貢献しました。

アマチュア時代

鈴木氏は中学で野球を始めましたが、当初は三塁手でした。福島高校に進学後、投手としての才能が開花。当時のチームには、後に聖光学院高校を率いる斎藤智也氏が同期として在籍していました。高校時代には、春の県大会準決勝で福島商業高校の古溝克之投手と投げ合い、惜しくも敗退。夏の大会でも準々決勝で敗れるなど、甲子園出場は叶いませんでした。

高校卒業後、2年間の浪人期間を経て慶應義塾大学文学部に入学。同期には、彼と同様に2浪を経て入学した猿田和三氏がいました。大学入学当初は肩のコンディションが万全ではありませんでしたが、地道なトレーニングを重ねることで投手としての力をつけていきます。2年生の春には、1学年下の志村亮投手と共に慶應義塾大学の投手陣を支える存在に成長しました。1985年秋季リーグでは、チームにとって13年ぶりとなる優勝を経験。続く明治神宮野球大会では志村投手が主戦として活躍し、決勝で西崎幸広投手を擁する愛知工業大学を下してチームを初優勝に導きました。しかし、1986年春季リーグの早慶戦では、勝利すれば優勝が決まるという状況で、9回二死から痛恨の逆転サヨナラ二塁打を浴び、リーグ優勝を逃す悔しさも味わっています。4年生になると、最速145km/hの速球を武器に、東京六大学野球リーグでも屈指の速球派右腕として高い評価を得ました。1987年には日米大学野球選手権大会の日本代表にも選ばれています。大学リーグ通算成績は48試合に登板し、18勝10敗、防御率2.74、199奪三振という素晴らしい記録を残しました。

大学卒業を控えたドラフト会議ではプロ球団からも注目されていましたが、「海外に出て勉強したい」という強い希望から、ドラフト前に社会人野球の強豪である熊谷組への入社を表明し、プロ入りを拒否。中日ドラゴンズや読売ジャイアンツといった球団がドラフト1位での指名を検討していましたが、鈴木氏の意向を受けて指名を断念しています。

社会人野球に進んだ1988年、熊谷組のエースとして都市対抗野球大会に出場。1回戦から3試合連続で先発を任され、準々決勝では日本たばこを相手に完封勝利を飾る活躍を見せました。しかし、NTT東海との準決勝では、同点の9回に救援登板したものの、サヨナラ3ランホームランを浴びて敗退しました。同年には、アマチュア野球世界選手権、そして野球が公開競技として行われたソウルオリンピックの日本代表にも選出され、オリンピックでは銀メダル獲得に貢献しています。翌1989年の都市対抗にもエースとして出場し、2勝を挙げましたが、準々決勝で新日鐵堺に敗れました。この頃のチームメイトには宮里太氏や佐藤和弘氏らがいました。

社会人時代も一貫してプロ入りには消極的な姿勢を示していましたが、1989年度のドラフト会議で西武ライオンズから指名を受けます。指名直後は「入団しない」と改めて表明しましたが、ドラフト直前に西武のスカウトと接触していたこともあり、その後の複数回の交渉を経て、推定ながら契約金7,500万円、年俸840万円という条件で入団に合意し、プロ野球選手としての道を歩むことになりました。

プロ時代

1990年に西武ライオンズに入団。ルーキーイヤーから先発や中継ぎとして一軍の試合に登板機会を得ます。特に同年9月12日に行われた対ロッテオリオンズ戦では、プロ入り初先発ながら見事に完封勝利を達成しました。同年11月にはパ・リーグ東西対抗戦にも出場しています。1991年には、オープン戦の開幕投手を務めるなど、首脳陣からの期待も高く、7月には2試合連続で完投勝利を挙げるなど、この年はシーズンを通して14試合に先発しました。同年の日本シリーズにも登板し、第4戦で2イニングを投げ、3安打1失点という内容でした。しかし、1992年以降は肘の故障なども影響し、登板機会が減少。年俸も減額されるなど、思うような成績を残せませんでした。1993年オフには、植田幸弘氏との交換トレードによって広島東洋カープへの移籍が決まります。

広島に移籍した1994年には、投球フォームをアンダースローに近い形に変更するという大きな転機を迎えます。このフォーム改造が功を奏し、主にリリーフ投手として活躍。自己最多となる36試合に登板し、防御率2.62という安定した成績を残しました。1995年10月には、金銭トレードによって古巣である西武ライオンズに復帰。しかし、再び目立った活躍はできず、1997年シーズン限りで現役を引退しました。

現役引退後

現役引退後は、長年在籍した西武ライオンズの球団職員としてセカンドキャリアをスタートさせました。スカウトとして東北地区や海外を担当した後、2012年には二軍ディレクターに就任。さらに2017年からは編成部のプロ担当チーフとして、球団の戦力強化に尽力しました。

西武ライオンズを離れた後、2022年11月22日には、独立リーグであるベースボール・チャレンジ・リーグ（ルートインBCリーグ）の群馬ダイヤモンドペガサスの監督に就任することが発表され、指導者として新たな一歩を踏み出しました。しかし、指揮を執った2023年シーズン、チームは北地区で最下位に終わり、シーズン終了後の10月30日に監督を退任することが発表されました。

選手としての特徴

鈴木氏は、サイドハンド気味のスリー・クォーターから繰り出される、最速140km/h台の速球が最大の武器でした。変化球としては、スライダーやフォークなどを投げていました。一方で、プロ入り後は制球力に課題が見られ、先発ローテーションに完全に定着することはできませんでした。しかし、広島移籍後のフォーム変更により、リリーフ投手として活路を見出しています。

記録・背番号

プロ初登板は1990年6月1日の対近鉄バファローズ戦、初奪三振も同試合で記録しました。初先発、初勝利、初完投、初完封は、いずれも1990年9月12日の対ロッテオリオンズ戦で達成。広島時代の1994年4月24日には、対横浜ベイスターズ戦でプロ初セーブを記録しています。

背番号は、西武時代が「34」（1990年～1993年）、広島時代が「26」（1994年～1995年）、西武復帰後が「46」（1996年～1997年）でした。群馬ダイヤモンドペガサス監督時代の背番号は「77」でした。

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