鈴木正久

鈴木 正久（すずき まさひさ）は、1912年（大正元年）8月7日に生まれ、1969年（昭和44年）7月14日に世を去った、日本のプロテスタント牧師です。日本基督教団の指導者として、特に第二次世界大戦下における教団の戦争責任を問うた「告白」によって、その名を知られています。

千葉県習志野に、陸軍軍人であった鈴木政義の子として生まれた正久は、早くからキリスト教に触れ、1929年には日本メソヂスト中遠教会で洗礼を受けました。青山学院神学部で学び、1936年に卒業後、日本メソヂスト教会の牧師として奉仕を開始しました。この頃、『日本メソヂスト時報』の編集主任を務める傍ら、碑文谷教会や亀戸教会で牧会活動を行いました。

1941年、戦時体制下で日本のプロテスタント諸教会が合同して日本基督教団が設立されると、鈴木は同教団の教師となりました。その後、本郷中央教会や駒込教会（現在の西片町教会）で牧師を務め、また教団内の宣教研究所委員長、伝道委員長、常議員といった要職を歴任し、教団運営の中心的役割を担うようになります。

彼のキャリアの頂点ともいえるのは、1966年に日本基督教団の総会議長に選出されてからの時期でしょう。この在任中、彼は多岐にわたる重要な課題に取り組みました。広島における原爆被災高齢者のための福祉施設建設、沖縄キリスト教団との合同に向けた協議など、様々な働きを進める傍ら、最も歴史的な意義を持つとされる「第二次大戦下における日本基督教団の責任についての告白」の発表に向けて心血を注ぎました。この告白は、太平洋戦争中に教団が戦争協力に積極的に加担した歴史的事実を認め、その罪を告白し、再び過ちを繰り返さないという強い決意を示すものでした。

しかし、これらの激務は彼の健康を蝕んでいきました。多忙のため病院での詳しい診察が遅れた結果、膵臓癌が発見されます。家族と教会関係者の協議により、長女である鈴木伶子（後に日本YWCA理事長や日本キリスト教協議会議長を務める）から病名が告知されました。告知からわずか一ヶ月後、鈴木正久は日本基督教団総会議長という現職のまま、1969年7月14日に56歳で帰天しました。

彼の遺した働き、特に戦争責任告白は、戦後の日本教会史において誠実な自己吟味と和解への重要な一歩として評価されています。また、『信仰と自由の手紙』、『キリスト教の現代的使命』、『主よ、み国を』、『神の国のおとずれ』などの著作を通じて、その神学思想と信仰の歩みを後世に伝えています。没後も、『鈴木正久説教集』や全4巻からなる『鈴木正久著作集』が刊行され、その思想は現在も多くの人々に影響を与え続けています。

鈴木正久の生涯は、激動の時代におけるキリスト者としての真摯な問いと実践、そして教会の歴史的な責任に向き合う勇気の証と言えるでしょう。

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