鈴木繁宗

鈴木繁宗は、生没年不詳の戦国時代初期の武将です。通称を兵庫助といい、伊豆の豪族である江梨鈴木氏の当主を務めました。父は鈴木繁用（鈴木重用）です。

1493年、伊豆国内で内紛が発生し混乱に乗じて伊勢盛時（後の北条早雲）が伊豆に侵攻すると、繁宗はこれにいち早く呼応しました。三津の松下氏や大見の三人衆らと共に堀越公方から離反し、足利茶々丸攻めに参加しました。

その後、繁宗は後北条氏の配下となり、伊豆水軍（北条水軍）を率いる武将の一人として活躍しました。伊豆衆21家のうちの一家に数えられ、その武勇は広く知られていました。

江梨鈴木文書には、繁宗が早雲の伊豆討ち入り前後に忠節を尽くしたことにより、江梨郷が不入の特権を得たと記されています。これは、領民が年貢や労役などの負担を免除される特別な権利であり、繁宗の功績が大きかったことを示しています。

1498年に発生した明応地震では、江梨村にも津波が押し寄せ、多くの庶民が海底に沈むという甚大な被害を受けました。この時、江梨鈴木氏の系図や財宝も家屋と共に流失してしまいました。

また、この津波で繁宗の娘が両眼を患いましたが、航浦院の薬師如来に回復を祈ったところ、完全に治癒したと伝えられています。

繁宗の死後、娘婿の鈴木繁朝が家督を継ぎました。

静岡県姓氏家系大辞典編纂委員会∥編著『静岡県姓氏家系大辞典』1995年。
小和田哲男『後北条氏研究』1983年。
沼津市立駿河図書館『江梨鈴木氏由緒書』1980年。
永岡治『伊豆水軍物語』1982年。
沼津史談会『沼津史談第36号』。