鈴木謙作

鈴木謙作（すずき けんさく）

鈴木謙作（1885年 - 没年不詳）は、日本の映画監督、脚本家。新劇の影響を受け、サイレント映画時代の日活現代劇部で活躍した人物です。後に牧野省三傘下に入り、直木三十五の映画製作の最末期に協力しました。

来歴

1885年（明治18年）に横浜市で生まれた鈴木謙作は、商業学校（旧制）を卒業後、島村抱月に師事し演劇に興味を持ちました。その後、川崎の日本蓄音器商会（のちの日本コロムビア）で演芸レコードの録音現場に携わった後、小松商会高田馬場撮影所で映画監督としてのキャリアをスタートさせました。

1920年（大正9年）、35歳頃に日活向島撮影所に入社。監督としての第一作は『勝利者』であり、その後1922年（大正11年）までに12本の映画を監督しました。1923年（大正12年）の女優解禁後には、『渦潮』で頭角を現し始め、『旅の女芸人』、『愛慾の悩み』、『人間苦』、『紋清殺し』といった佳作を残しました。同年9月1日の関東大震災により向島撮影所が壊滅すると、鈴木は京都の日活京都撮影所第二部（現代劇部）へ移りました。

1924年（大正13年）には、溝口健二、大洞元吾、近藤伊与吉との共同監督作『伊藤巡査の死』に名を連ね、村田実原作、細山喜代松脚色の『籠の鳥 姉妹篇 恋慕小唄』を手がけました。1925年（大正14年）には、松竹・東亜キネマ・日活の3社競作『大地は微笑む』の第三篇を監督しました。

同年、鈴木を頼って入社した芝蘇呂門こと佐々木美長のオリジナル脚本『血の人形』を監督した後、同作の主演女優であった宮部静子との恋愛問題が噂となり、芝蘇呂門とともに日活を退社し、マキノ・プロダクションに入社しました。宮部も鈴木との結婚後、1926年（大正15年）5月に日活を退社しています。

マキノ・プロダクションでは、1927年（昭和2年）に芝蘇呂門の脚本で『鈴蘭の唄』と『獣人』を監督。当時マキノと提携していた直木三十五の連合映画芸術家協会製作作品として、菊池寛原作の『新珠』、三上於菟吉原作の『炎の空』をいずれも直木三十五が執筆した脚本で監督しましたが、病を得て同年引退しました。当時42歳。

晩年は内外タイムス社（当時読売新聞社系）に勤務しました。同社の「内外タイムス」は1949年（昭和24年）6月1日創刊であり、当時すでに鈴木は64歳でした。その後の消息はわかっていません。

主なフィルモグラフィ

『勝利者』 : 1920年
『渦潮』 : 1923年
『旅の女芸人』 : 1923年
『愛慾の悩み』 : 1923年
『人間苦』 : 1923年
『紋清殺し』 : 1923年
『伊藤巡査の死』 : 1924年（共同監督）
『籠の鳥 姉妹篇 恋慕小唄』 : 1924年
『大地は微笑む 第三篇』 : 1925年
『血の人形』 : 1925年
『鈴蘭の唄』 : 1927年
『獣人』 : 1927年
『新珠』 : 1927年
『炎の空』 : 1927年（遺作）

関連事項

日活京都撮影所
マキノ・プロダクション（牧野省三）
* 連合映画芸術家協会（直木三十五）

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