鈴木輝彦

鈴木輝彦：将棋棋士としての歩みと多彩な才能

鈴木輝彦は、1954年10月18日生まれの静岡県袋井市出身の将棋棋士です。16歳で廣津久雄九段に入門し、1970年に奨励会へ入会。その後、地道な努力を重ね、1978年にプロ棋士四段としてデビューを果たしました。

奨励会時代からプロ入り直後にかけては、順調とは言えない時期もありました。二段から三段昇段まで時間を要し、その間には病気による休場も経験しています。しかし、持ち前の粘り強さで困難を乗り越え、着実に棋力をつけていきました。

順位戦では、デビュー当初は下位クラスに在籍していましたが、着実に実力をつけ、C級2組からC級1組、B級2組と昇級を重ね、1990年にはB級1組にまで上り詰めます。この昇級に伴い、七段に昇段しました。B級1組では、田中寅彦九段や福崎文吾九段といった強豪棋士にも勝利する活躍を見せますが、惜しくも翌年には降級を経験します。

順位戦以外にも、様々な棋戦で活躍しました。棋王戦では本戦3回戦に進出、NHK杯戦ではベスト8の成績を残しています。王座戦では予選を勝ち抜き、本戦でもタイトル保持者を含む強豪棋士を破るなど、その実力をいかんなく発揮しました。

プロ棋士としての活動に加え、鈴木輝彦は文筆活動でも大きな成果を上げています。将棋に関する著書の出版や、将棋雑誌への寄稿を多数行い、その分かりやすい解説と深い洞察で多くの読者から支持を得ています。将棋世界誌上での「矢倉中飛車」に関する連載は、彼の専門性の高さを示すものと言えるでしょう。文筆活動の原点は、二段時代の入院中に毎日読書をしていた経験にあると本人は語っています。1997年には、将棋世界に連載した「棋士それぞれの地平」で将棋ペンクラブ大賞・一般部門佳作を受賞しています。

さらに、鈴木輝彦はマジックのプロフェッショナルとしても知られています。また、1999年からは日本将棋ネットワーク株式会社（NSN）の代表取締役社長を務め、将棋界の発展に貢献しました。

多彩な才能を持つ鈴木輝彦は、将棋棋士、文筆家、実業家、そしてマジシャンと、様々な顔を持つ人物です。これらの経験を通して培われた幅広い知識と視点が、彼の将棋観や文筆活動に反映されていることは間違いありません。

2004年に引退を発表しましたが、その後も日本将棋連盟理事として将棋界に貢献し続けています。2010年には引退棋士規定により八段に昇段。その将棋人生は、多くのファンに深い印象を残していると言えるでしょう。

棋風

鈴木輝彦の棋風は、居飛車党で、矢倉、相掛かり、角換わり、対振り飛車急戦と幅広い戦法を操ります。しかし、特徴的なのは、自陣の整備が完了する前に積極的に仕掛け、力戦を挑むことが多い点です。

また、矢倉中飛車を得意としており、自らも『将棋世界』誌上でその専門性を強調しています。奨励会時代から指し続けている戦法ですが、戦績が低迷した時期には、妻から「矢倉中飛車は止めて」と言われるほどだったというエピソードも残っています。

主な成績

王座戦：準々決勝進出2回
NHK杯戦：ベスト8
通算300勝達成
現役勤続25年表彰

著書

将棋戦法小事典
続・将棋戦法小辞典

その他

愛称：「ミジンコ」
2017年、日本将棋連盟理事（非常勤）に就任。

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