鈴木銃太郎

鈴木 銃太郎（すずき じゅうたろう）

クリスチャン北海道開拓者

鈴木銃太郎は、安政3年3月17日（1856年4月21日）に上田藩士である鈴木親長の長男として生まれた。明治時代初期、新たな時代を迎えた日本において、彼は父と共にキリスト教の洗礼を受けた。1874年（明治7年）7月、宣教師デイヴィッド・タムソンから施された洗礼は、その後の彼の人生を大きく方向づける出来事となる。

銃太郎は、タムソン塾、ワデル塾といった教育機関を経て、東京一致神学校で神学を修めた。教会において伝道の働きを志し、1879年には教師試補（伝道師）として准允（認定）を受けた。しかし、翌1880年に行われた按手礼（正式な牧師となるための儀式）の試験には不合格となり、正規の牧師資格を得ることはできなかった。

それでも、中会の承認を得て、埼玉県に新設された和戸教会の初代牧師として赴任することになる。しかし、その牧会生活は長く続かなかった。1881年（明治14年）、一部の信徒から「嫌疑の風聞がある」として訴えられ、教会を去ることを余儀なくされた。牧師を罷免されたことは、彼の人生における大きな挫折であった。

教会の職を離れた後、銃太郎は新たな道を模索する。彼は、依田一族が中心となって結成された北海道開拓団「晩成社」に関わるようになる。開拓の夢を抱き、晩成社の幹部として北海道の十勝地方を目指した。

1882年（明治15年）、彼は晩成社の盟主である依田勉三に随行し、帯広地域の土地選定調査旅行に参加する。この時の体験は過酷なものであった。厳冬期の帯広原野で越冬することになり、極限状態の中で開拓の厳しさを肌で感じた。しかし、この滞在中に、彼は現地に暮らすアイヌ民族と出会い、深い親交を築くことになる。

翌1883年（明治16年）5月、晩成社の移民団がようやく帯広の地に到着した。銃太郎は、幹部として移民団を迎え入れ、開拓地の整備に尽力した。開拓生活は困難の連続であり、食料不足なども深刻な問題だった。銃太郎は、こうした状況下で、かねてより親交のあったアイヌ民族への食料援助を行った。また、彼の妹カネの夫である渡辺勝と共に、札幌権県（現在の北海道の一部）に対して、アイヌ民族への農業指導を行うことの重要性を進言するなど、彼らの生活向上にも積極的に関わった。

アイヌ民族との関係は、単なる支援に留まらなかった。1886年（明治19年）5月、彼はシブサラ（現在の芽室町西土狩にあたる地域）に暮らすアイヌ民族、サンケモッテの娘であるコカトアンと結婚した。これは当時の社会において非常に珍しい出来事であり、彼がアイヌ民族との間に築いた絆の深さを示している。

しかし、晩成社での活動にも変化が訪れる。1888年（明治21年）5月、彼は晩成社の幹事を辞任した。その後、1889年（明治21年）3月頃、晩成社の移民仲間であった高橋利八と共に、再びシブサラの地に新天地を求めて入植した。彼はそこで、アイヌ民族と共に、新たな開拓生活を送ったのである。

鈴木銃太郎の生涯は、キリスト教信仰と北海道開拓、そしてアイヌ民族との深い関わりが交錯する、波乱に富んだものであった。牧師としての挫折を乗り越え、未開の原野でアイヌとの絆を築きながら開拓に身を投じた彼の生き様は、近代日本の知られざる一面を物語っている。

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