鉄平と順子

1970年代初頭、日本テレビ系列の火曜夜9時台に放送されたテレビドラマ『鉄平と順子』は、全15回をもってその幕を閉じましたが、夫婦のあり方という普遍的なテーマを、軽妙なタッチで描いた作品として記憶されています。1972年 10月3日に放送を開始し、翌1973年 1月16日まで、毎週火曜日の21時00分から21時30分までの30分枠でオンエアされました。

物語

物語の中心となるのは、明倫大学大学院で心理学を専攻する若き研究者、相良鉄平です。彼は知的な探求に励む一方で、年季の入った愛車を駆り、どこか現実離れした「青い鳥」を追い求めるように旅を続けるという、掴みどころのない一面を持っています。そんな鉄平が、大学の図書室で偶然出会ったのが、林順子という名の美しい女性でした。二人は運命的な引力を感じ、やがて鉄平からのプロポーズを経て結ばれます。しかし、結婚生活は理想ばかりではありません。二人の間には様々な出来事が起こり、共に歩む中で「夫婦の幸せとは一体何なのか」という問いに向き合っていくことになります。本作は、この二人の新婚生活を通して、結婚という関係性における喜び、悩み、そして成長を、温かくユーモラスな視点から描き出しました。

放送枠の背景

本作が放送された火曜21時00分からの30分枠は、この時期、変遷を経ていました。1969年秋に30分ドラマ枠が中断して以来、約3年ぶりに復活した枠の第一作が本作でした。しかし、番組は15回で終了。その直前に放送されていた番組の後を受け、この枠は特別番組枠である『火曜スペシャル』（第3期）が拡大され、1973年9月まで継続しました。結果的に、『鉄平と順子』は、この時間帯における30分ドラマ枠としては事実上最後の作品となりました。

キャスト

主人公・相良鉄平を演じたのは、俳優の大和田伸也。そして、その妻となる林順子役には、当時若手女優として注目を集めていた松坂慶子が配されました。二人の瑞々しい演技が、物語に彩りを与えています。共演陣も個性豊かな面々が揃いました。鉄平の姉・昌代を、後の樹木希林である悠木千帆が演じたほか、森本レオ、奈美悦子、寺田農、有島一郎、幾野道子、山本耕一、浜田寅彦、月丘千秋、荒牧啓子らが主要キャストとして名を連ねています。その他の出演者としては、三笠すみれ、桜むつ子、小池朝雄、小泉博、下元勉、白石奈緒美、柴田未保子、野村けい子、あかはゆきなどが登場し、物語世界を豊かにしました。

スタッフ

本作は、三浦朱門の小説「青い鳥を告発せよ」を原作としています。脚本は、多くの名作ドラマを手掛けた市川森一が全回を担当。登場人物の心情や夫婦間の機微を丁寧に描き出しました。監督は番匠義彰と窪川健造が務め、温かい映像世界を作り上げています。音楽は牧野由多可が担当し、ドラマの雰囲気を盛り上げました。制作は国際放映です。

主題歌

番組を飾った主題歌は「ふたりの青い鳥」。コスモスが歌唱を担当し、爽やかなメロディーが物語のテーマと響き合いました。

サブタイトル

全15回のサブタイトルは以下の通りです。

1. 妻をめとらば（1972年 10月3日）
2. 二人だけの旅立ち（1972年10月10日）
3. 去年、別れた海へ（1972年10月17日）
4. さすらいのマイ・ホーム（1972年10月24日）
5. こころに風の吹く夜は（1972年10月31日）
6. 鳥籠の中の草原（1972年11月7日）
7. 幸福への迷路（1972年11月14日）
8. 父と母の場合は（1972年11月21日）
9. やさしい獣（けだもの）（1972年11月28日）
10. 木枯しの予感（1972年12月5日）
11. 階段の上の毛糸玉（1972年12月12日）
12. 哀しいクリスマス（1972年12月19日）
13. 遠い春に向って（1972年12月26日）
14. 浮気だって?!（1973年1月9日）
15. ふたりの青い鳥（1973年 1月16日）

備考

放送期間中、1973年 1月2日はプロボクシング世界フライ級タイトルマッチ中継のため休止となりました。また、火曜21時からの30分枠でドラマが放送されるのは、1966年の『ぼくの母さん』以来、実に5年半ぶりのことでした。短い放送期間ではありましたが、『鉄平と順子』は、その後の火曜夜の番組編成にも影響を与える歴史的な作品となりました。

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