鉄床戦術

鉄床戦術（かなとこせんじゅつ）

鉄床戦術とは、別名「鎚と鉄床戦術」とも呼ばれる、複数兵科を組み合わせた戦術の一つです。この戦術では、軍を二つの部隊に分け、一方が敵を引きつけている間に、もう一方が敵の背後や側面に回り込み、包囲・挟撃を行います。

戦術の概要

鉄床戦術において、敵を引きつける役割を担う部隊は、低機動ながらも高い耐久性を持つ兵科が選ばれます。一方、敵の背後に回り込む部隊は、機動力に優れた兵科が選ばれるのが一般的です。

この戦術の名称は、敵を固定する「金床」の役割を果たす部隊と、そこに打ち付ける「槌」の役割を果たす部隊の動きが、鍛冶屋の作業を連想させることに由来します。鉄床戦術を効果的に実行するには、機動力の高い部隊と、諸兵科の連携が不可欠です。ただし、この戦術は自軍の兵力を分散させるため、「槌」と「金床」の連携が不十分な場合、敵に各個撃破されるリスクも伴います。

歴史と実例

鉄床戦術は、古代ギリシャやペルシャで考案され、盛んに用いられました。古代においては、重装歩兵と騎兵（特に重装騎兵）の組み合わせが一般的でした。重装歩兵が密集隊形（ファランクス）を組んで敵の歩兵に突撃し、白兵戦で敵の進軍を食い止めます。その間に、騎兵が敵の隊列の後方や側面に迂回し、突撃を仕掛けます。これにより、敵の隊列は分断・混乱し、壊滅に至ります。

ファランクスは、正面からの攻撃には非常に強固ですが、側面や後方からの攻撃には脆弱です。そのため、鉄床戦術は、敵のファランクスを打ち破るのに非常に効果的な戦術でした。

この戦術は、アレクサンドロス大王が好んで用いたことで知られています。彼は、この戦術によってペルシア軍を幾度も破りました。また、彼の後継者たちもこの戦術を受け継ぎ、エウメネスやデメトリオスといった将軍たちが、鉄床戦術を用いて戦果をあげました。

現代における鉄床戦術

現代においても、鉄床戦術の概念は様々な戦術に応用されています。例えば、陣地を構築して持久する歩兵部隊に敵を引きつけ、その間に戦車部隊が背後に回り込む戦法は、鉄床戦術の一例と見なすことができます。

朝鮮戦争において、連合軍が発動したスレッジハンマー作戦は、仁川上陸作戦（クロマイト作戦）と連携し、朝鮮人民軍を挟撃することを目的としたものでした。この作戦も、鉄床戦術の現代的な応用例として挙げられます。

まとめ

鉄床戦術は、古代から現代まで、様々な戦いで用いられてきた有効な戦術です。しかし、その実行には高度な連携と機動力が求められます。また、兵力の分散というリスクも考慮しなければなりません。この戦術を理解することは、歴史上の戦いを深く理解する上で、非常に重要と言えるでしょう。

関連項目

[[重装歩兵]]
重装騎兵
翼包囲
[[釣り野伏せ]]

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