金床

鉄床：金属加工の要となる作業台

鉄床は、鍛造や板金加工において加熱した金属を載せて加工する鋳鉄製または鋳鋼製の作業台です。古くは青銅器時代から使用されており、鍛冶技術のシンボルとして認識されることもあります。

鉄床の種類と特徴

鉄床は、サイズ、形状、機能など様々な種類があります。

1. サイズと材質

鉄道の廃レールを利用した小型のものから、100キログラムを超える大型のものまで、サイズに幅があります。材質も、一般的な鋳鉄や鋳鋼の他、炭素工具鋼や軟鉄の上に鋼を鍛接したものなど多様です。近年は、趣味の金属加工の需要増加に伴い、小型で軽量な卓上タイプの鉄床も普及しています。

2. 角付き鉄床

最も一般的なタイプで、片側または両側に「鳥口」と呼ばれる突起があります。この鳥口は、金属を曲げる加工に用いられます。上面は平らな「フェイス」になっており、金属の平面加工に使用されます。英語では、鳥口を「horn」、フェイスを「face」と呼びます。両端に鳥口を持つタイプは「タブルホーンアンビル」と呼ばれています。

3. 角無し鉄床

鳥口を持たないシンプルな形状の鉄床です。「ブロックアンビル」などと呼ばれ、曲線加工を必要としない作業に適しています。精密な金属加工やホビー用として、薄型で軽量な卓上タイプも存在します。

4. 蜂の巣床

複数の穴が空いた特殊な形状の鉄床で、日本の刀鍛冶が伝統的に使用してきた「鶴首」という棒状の鉄床を固定して用います。蜂の巣状の穴は、様々な形状の金属を加工する際に役立ちます。英語では「swage block」と呼ばれ、スエージ（かしめ）加工にも使用されます。

鉄床の用途

鉄床は、金属加工以外にも、様々な分野で用いられています。

1. 音楽

金属の槌で鉄床を打つ音は、楽曲や音響効果として使用されています。ヴェルディのオペラ『イル・トロヴァトーレ』や、ワーグナーの楽劇『ニュルンベルクのマイスタージンガー』、『ニーベルングの指環』など、多くの作品で鉄床を打つ音が効果的に用いられています。

2. 軍事

軍事用語では、「鉄床戦術」という用語があります。これは、敵を挟み撃ちにする戦術を、槌と鉄床が対象物を挟み打つ様子に例えたものです。第二次世界大戦中のカーンの戦いなどで使用されました。

3. 気象

積乱雲の一種である「鉄床雲」は、その形状が鉄床に似ていることから名付けられました。雲の上部が対流圏界面に達し、水平方向に広がった様子が、鉄床の形状を連想させます。

鉄床と関連するもの

鉄床と関連する用語として、鉄床台（鉄床を固定するための台座）、鉄敷（鉄床の別名）などがあります。また、鉄床とセットで使用される槌も重要な道具です。

まとめ

鉄床は、古くから現代まで金属加工に欠かせない道具です。その形状や機能は多様であり、用途に応じて適切な鉄床を選ぶことが重要です。様々な分野で活躍する鉄床は、これからも金属加工技術を支え続けるでしょう。

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