銀坊主

銀坊主（ぎんぼうず）

銀坊主は、1907年に石黒岩次郎によって育成されたイネの品種で、その特徴は耐肥性に優れ、いもち病に強い点です。また、晩生であるため、成熟期が遅くなります。植物体は強靭で中粒の穂を持ち、株が良く広がり多収入が期待できます。銀坊主の品種名は、「愛国」という品種の中から選ばれた特徴的な株の見た目から由来しています。

特性と特長

銀坊主は、施肥過多な環境においても倒れにくい特性を持っています。これは、太い稈（いねの茎）と豊富な穂数によるもので、いもち病に対する抵抗力が高いため、安定した栽培が可能です。短日感応性も高く、特定の条件下では他の品種と比較して早く成長することができます。食味の良さは他の品種に比べて劣りますが、搗精歩合の高さが市場で評価されており、主に商業用に多くの農家によって栽培されています。

歴史的背景

銀坊主の誕生は、石黒岩次郎が富山県婦負郡寒江村で行った実験から始まりました。彼は、肥料を多く使って栽培した「愛国」の中から、唯一倒れなかった株を見つけました。この株は、昭和の時代を通して多くの特性が確認され、翌年にはさらに栽培が試みられました。その成功を受けて、銀坊主は近隣の農家にも速やかに広まりました。1921年には富山県の奨励品種に指定され、全国に広まるきっかけとなりました。

特に1940年代には、日本海側での栽培が推奨され、さまざまな環境条件に適応して成長するため、多くの農家に利用されるようになりました。また、朝鮮半島や中国北部へも普及し、昭和30年代には天津周辺での栽培も確認されています。

品種の発展と影響

1919年以降、銀坊主の純系選抜が進められ、熟期が約半月早い「銀坊主中生」などの派生種も登場しました。これに伴い、人工交配による育種も進み、「農林8号」をはじめ多くの新しい品種が生まれました。

銀坊主から派生した優良品種には、「コシヒカリ」や「ササニシキ」があり、米の栽培技術の向上に寄与しました。また、重要な記念碑として、JR富山駅近くには石黒岩次郎を顕彰する「石黒岩次郎翁碑」が存在します。

関連品種と系統

銀坊主には多くの関連品種が存在し、特に純系選抜種や突然変異種などが挙げられます。「銀坊主中生」、「銀坊主38号」、「銀坊主88号」といった純系選抜種や、「短銀坊主」といった突然変異種があります。また、子品種として「農林8号」、「農林13号」、「農林15号」があり、孫品種には「農林43号」や「農林22号」、「ササシグレ」が含まれ、その後のひ孫品種にも「コシヒカリ」や「ササニシキ」があります。

これらの系統は、米の栽培において重要な役割を果たしており、銀坊主の繁栄は今後も続くことでしょう。

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