銀河英雄伝説の用語

この項目では、田中芳樹氏の小説、およびそれを原作としたアニメ『銀河英雄伝説』に登場する用語について記述します。

概要

原則としてオリジナルの用語を解説していますが、一般的に使用されている用語も、原作に記述された内容に関連して説明の必要ありと判断されるものについては項目を設けて解説します。原作/アニメ/コミック/ゲームなどで意味合いが異なる場合は、その都度解説を加えます。

紀年法については、以下の関係になります。

新帝国暦1年 = 帝国暦490年 = 宇宙暦799年 = 西暦3599年

事件・出来事

作品中における事件・出来事の用語について、時系列順に銀河帝国の成り立ちを基準に記述します。個別の戦い・戦争名については銀河英雄伝説の戦役の項を参照してください。

銀河連邦及び本編開始前の時代

13日戦争
西暦2030年代に勃発した全面核戦争。地球を二分していた北方連合国家と三大陸合州国が互いに核攻撃を行い、両国は滅亡。世界中の大都市が壊滅し、戦乱の時代が始まりました。
90年紛争
13日戦争後、2129年の地球統一政府樹立まで続いた戦乱。地球人口は10億人前後に激減しました。北米大陸では教団国家群が割拠し、人々の精神を破滅させたとされます。
長征1万光年（ロンゲスト・マーチ）
アーレ・ハイネセン率いる共和主義者たちが、自由惑星同盟を建国するまでの苦難の旅程。帝国暦164年にアルタイル星系を脱出し、同218年にバーラト星系を発見するまでの道程を指します。ハイネセンらは酷寒の惑星から脱出し、半世紀にわたる航海の末、バーラト星系にたどり着き、自由惑星同盟を建国しました。

法律・条約

作品中に登場する法律・条約名を時系列順に挙げます。

帝国

劣悪遺伝子排除法
帝国暦9年、初代皇帝ルドルフによって発布された法律。優生学的思想に基づき、遺伝的に劣悪と定義された者を対象に、去勢やロボトミー手術などが行われました。ルドルフ自身の寵姫が先天性障害を持つ男児を出産した際、真相は隠蔽されました。マクシミリアン・ヨーゼフ2世により有名無実化されたとされるが、その後も差別は残りました。オーベルシュタインは自身の視覚障害を理由に、この法律を憎む動機としています。
リップシュタット盟約
帝国暦488年、門閥貴族がラインハルトとリヒテンラーデ公爵に対抗するために結集した盟約。盟主はブラウンシュヴァイク公爵、副盟主はリッテンハイム侯爵。この盟約によりリップシュタット戦役が始まりました。
冬バラ園の勅令
新帝国暦2年（宇宙暦800年）にラインハルトが旧自由惑星同盟領を帝国に併合すると宣言した勅令。これにより自由惑星同盟は消滅しました。

同盟

トラバース法
同盟で制定された「軍人子女福祉戦時特例法」。戦災遺児を軍人の家庭で養育する法律で、養育費は政府から貸与されます。ユリアンはこの法律によりヤンの被保護者となりました。
バーラトの和約
宇宙暦799年/帝国暦490年5月25日、帝国と同盟の間で締結された和平条約。惑星ウルヴァシーを含むガンダルヴァ星系などの割譲、年間1兆5千億帝国マルクの安全保障税の支払いなどが定められ、事実上同盟の降伏条約とされました。その後、ラインハルトの再宣戦により破棄されました。

組織・役職

作品中に登場する組織、および政府機関・軍隊内の役職について、帝国・同盟別に固有的な物を挙げます。

帝国

宰相
銀河帝国における官吏の最高位。ラインハルトが皇帝に即位するまで務めました。ローエングラム王朝になってからは宰相は置かれず、皇帝親政となりました。
尚書
銀河帝国における閣僚。ゴールデンバウム王朝では8省、ローエングラム王朝では9省に尚書が置かれました。
国務尚書
銀河帝国の尚書の一つ。帝国宰相を設置しない場合は首席閣僚となります。旧体制下ではリヒテンラーデ、ローエングラム王朝ではマリーンドルフ伯が務めました。
軍務尚書
銀河帝国の軍務省の長官。軍事行政上の責任者です。
統帥本部
帝国の軍令（戦略）を司る機関。長である統帥本部総長は軍務尚書に次ぐ重職とされます。ローエングラム王朝では皇帝親征が常態化し、ロイエンタールの新領土（ノイエ・ラント）総督就任に伴い皇帝が兼ねることとなりました。
帝国軍三長官
軍務尚書、統帥本部総長、宇宙艦隊司令長官の三者を指します。ラインハルトはリップシュタット戦役に先立ち三長官職を兼任し「帝国軍最高司令官」の称号を認められています。
新領土（ノイエラント）総督
自由惑星同盟滅亡後の銀河帝国において、旧同盟領を支配する役目を負います。初代総督のロイエンタールが叛乱を起こした後は設置されませんでした。
社会秩序維持局
帝国暦10年、ゴールデンバウム王朝で設立された政治機関。政治犯や思想犯などを取り締まりました。初代局長はエルンスト・ファルストロング。
内国安全保障局
ローエングラム王朝になって廃止された社会秩序維持局に代わり設立された政治犯/思想犯の取り締まり機関。初代局長はラング。
幼年学校
帝国軍傘下の教育機関。貴族と上流市民の子弟が通う学校とされており、10歳で入学し、15歳で卒業/修了します。修了すると、通常は准尉の階級で任官します。
黒色槍騎兵艦隊（シュワルツ・ランツェンレイター）
所属する全ての艦艇を黒一色で塗装した帝国軍の艦隊。艦隊司令官はビッテンフェルト。「宇宙最強」と評され攻勢にきわめて強い精鋭部隊です。
門閥貴族
ゴールデンバウム朝銀河帝国における貴族階級の中でも、さらに限られた上位層を指します。血縁あるいは縁故による排他的な結束を特徴とし、帝国の政治や経済を支配し搾取できる立場にあります。
皇族
ゴールデンバウム朝銀河帝国を興した初代皇帝ルドルフの血縁者にして子孫であり、歴代皇帝は基本的にこの皇族より世襲制で即位します。

同盟

最高評議会
自由惑星同盟の行政上の意思決定を司る機関。議長を頂点とし、副議長兼国務委員長、書記と8名の委員長の計11名が評議員を構成します。
委員会
自由惑星同盟における行政庁の呼び名。国務・国防・財政などがあります。
委員長
自由惑星同盟における行政庁の長の呼び名。国防委員長など。委員長は同時に最高評議会の評議員を兼務します。
国防委員会
同盟の軍政を司る機関で、帝国の軍務省に相当します。その長は「国防委員長」で、文民政治家が就任しています。
統合作戦本部
同盟の軍令を司る機関。帝国の統帥本部に相当します。地上55階/地下80階のビルにありましたが、宇宙暦799年にミッターマイヤーにより破壊されました。
統合作戦本部長
同盟軍における軍部のトップ。ナンバー2は宇宙艦隊司令長官となります。
第13艦隊（→イゼルローン要塞駐留艦隊、ヤン艦隊）
アスターテ会戦でほぼ全滅した艦隊の残存部隊に新規の人員を加えて結成された艦隊。艦隊司令官はヤン。構成人員から「敗残兵と新兵の寄せ集め」と揶揄されていました。
薔薇の騎士（ローゼンリッター）
同盟軍において、帝国からの亡命者の子弟で構成されている連隊。同盟最強の白兵戦部隊であり、その戦闘能力は1個連隊で1個師団に匹敵すると称されます。
救国軍事会議
同盟政府の腐敗を快く思わない軍人からなる、クーデター組織。議長はグリーンヒル大将。一時的に同盟の中枢部を押さえましたが、国民の不安が増大し、ヤン艦隊に鎮圧されました。
憂国騎士団
同盟に存在する国家主義者の集団。反国家的及び反戦的な言動を弾圧しています。トリューニヒトや地球教とつながりがあるとされます。

帝国・同盟共通事項

階級

元帥
両軍の階級の最上級。帝国軍では優遇されていますが、同盟ではそれほどではありません。
将官
帝国軍は5階級、同盟軍は4階級あります。
佐官
帝国・同盟ともに大佐・中佐・少佐の3階級です。
二階級特進
帝国、同盟両者共に戦死者に二階級特進が適用される場合があり
幕僚総監
ゴールデンバウム王朝の帝国ではクラーゼン元帥が就いていました。ローエングラム王朝では初め設置されませんでしたが、シュタインメッツ上級大将が就任し、戦死後はヒルダが、ヒルダが皇妃になるとメックリンガー上級大将が就任しました。
宇宙艦隊司令長官
実戦部隊の中心である宇宙艦隊の全てを束ねる長。「戦術」面における意思決定権を有します。
艦隊司令官
1個宇宙艦隊を指揮します。同盟では中将がその任にあたります。
宇宙艦隊総司令部
宇宙艦隊司令長官をトップとして戦闘作戦の立案及び艦隊の運用等を行う機関です。
士官学校
帝国と同盟の両方に存在する軍隊の傘下教育機関。4年間で軍隊の士官になるための教育を受けます。
憲兵隊
両国に存在する憲兵隊。帝国では軍内部の規律と秩序の維持だけでなく、国事犯や大逆犯などの軍外部の重大犯罪の捜査も行っています。
弁務官
または高等弁務官。外交関係が存在する相手国家の領土に駐在し、外交/国家間の交渉を行う府の代表として存在します。
首相
銀河帝国正統政府における閣僚の最高位。当初、帝国宰相に就任するのを遠慮していたレムシャイド伯爵が「首相」に就いた事だけが記述されています。
または自由惑星同盟における、星系政府の長。外伝「ダゴン星域会戦記」に「バンプール星系政府首相」であったコーネル・ヤングブラッドが登場します。

軍事用語

アルテミスの首飾り
自由惑星同盟の首都星ハイネセン軌道上に設置されている迎撃衛星群。ヤンが氷塊を衝突させて破壊しました。
FTL
「超光速通信」と呼ばれる超光速通信方法。原理は不明です。
艦隊
銀河英雄伝説世界の艦隊は、本伝時期には銀河帝国・自由惑星同盟ともに1万隻から1万5000隻前後の宇宙戦闘艦の集団を指します。
宇宙艦隊
宇宙空間を航行する艦艇によって構成される艦隊。銀河英雄伝説世界においては、銀河帝国軍・自由惑星同盟ともに、国家の宇宙戦力の総体を宇宙艦隊と称します。
分艦隊
一個艦隊より下位の宇宙戦闘艦の集団単位。数千隻の宇宙戦闘艦によって構成されます。
宇宙戦闘艦
戦艦、宇宙母艦、巡航艦、駆逐艦などが存在します。
ゼッフル粒子
カール・ゼッフル博士によって発明されたガス状の化学物質。主に屋内戦で火器が使われることを抑止する目的で使用されます。
装甲車
惑星上戦闘で用いられる戦闘車両。帝国軍の「機動装甲車“パンツァーIV”」は当時の帝国軍地上部隊の主力兵器です。
雷神の鎚（雷神のハンマー）
イゼルローン要塞の要塞主砲。出力9億2400万メガワットのビーム砲です。
装甲擲弾兵
帝国軍陸戦隊で重装甲服を着用した歩兵。小火器程度ではまずダメージを受けません。
単座戦闘艇
一人乗りの小型宇宙戦闘艇。同盟軍のスパルタニアンや帝国軍のワルキューレが該当します。
戦斧（トマホーク）
装甲擲弾兵をはじめとする帝国/同盟双方の陸戦兵が使う武器のひとつで、刃の部分が「炭素クリスタル」という素材で出来ています。
タンク・ベッド
艦艇の一装備。プラスチック製の密閉式タンク内に水温32℃、水深30cmの濃塩水を入れたもので、心身のリフレッシュ効果が期待できます。
ブラスター
現代の拳銃に相当する、帝国/同盟双方で用いられている銃器です。
レーザー水爆
レーザーによる核融合反応を起こす兵器（純粋水爆）。

暦法

宇宙暦
作品中の基本的な暦。西暦2801年に銀河連邦が誕生した時、西暦を廃してこの年を宇宙暦1年としました。
帝国暦
宇宙暦310年、ルドルフが銀河帝国の樹立を宣言し、皇帝に即位した時に制定された暦。
新帝国暦
帝国暦490年（宇宙暦799年）にローエングラム王朝が成立した時、帝国暦に代わって制定された暦。
西暦
作中ではすでに使用されていない暦法ですが、歴史上の出来事を記載する場合に使用される場合があります。
標準暦
宇宙暦、帝国暦、新帝国暦ともに、地球起源の24時間を一日、365日を1年とし、同じ日を1月1日とする「標準暦」が採用されています。

各暦法の換算は、新帝国暦1年=帝国暦490年=宇宙暦799年=西暦3599年となります。

通貨単位

クレジット
銀河連邦で使用されていた通貨単位。
帝国マルク
銀河帝国で使われている通貨単位。ローエングラム王朝成立後も引き続き使用されました。
ディナール
自由惑星同盟の通貨単位。
フェザーン・マルク
フェザーンの通貨単位。

その他用語

決闘
原作小説の描写
オスカー・フォン・ロイエンタールが、恋敵である3人の男から挑まれて行った。名誉あるものとはみなされず私闘の類いであるとみなされ、双方ともに一階級降等処分となった。
OVA版の描写
銀河帝国内にて行われる調停方法の一つ。本来は争いは民事裁判で決着をつけるべきところで言いがかりをつけ、無理やり決闘に持ち込んで事態を解決させるのが大貴族の常套手段となっている。
言語
物語世界における公用語。銀河帝国と自由惑星同盟では、違う言葉が公用語として用いられていることになっていますが、作中では（日本語以外への翻訳を除き）双方とも日本語でセリフを記述・発音しています。
サイオキシン麻薬
物語中に登場するドラッグで、化学合成によって製造される合成麻薬。服用した場合神経中枢に相当な快楽を齎すが、一方で中毒性が極めて強く、特に催奇形性と催幻覚性が強い。
三次元チェス
空間に投影された3次元映像を使って行うチェス。帝国・同盟の双方で普及しています。
爵位
銀河帝国の貴族の階級を表し、上から公爵、侯爵、伯爵、子爵、男爵、帝国騎士の順になります。
帝国騎士（ライヒスリッター）
帝国の貴族の中で、爵位を持たない下級貴族の代表的な身分。作中ではミューゼル家、ロイエンタール家、ファーレンハイト家などがこれにあたります。
フライングボール
球技。帝国・同盟の双方で行われています。
ワインの産年表示
作中、特に帝国では、帝国暦で特定の産年表示を持つワインがしばしば話題に出されます（産地は不明）。
宗教
既に人類の宇宙進出時代から、宗教の影響はかなり小さくなっており、カルト的に信者を増やしている地球教や個人崇拝のたぐいを除いて、大きな勢力を持つ宗教・信仰や信仰対象は登場しません。
地球教
地球という惑星そのものを神としてあがめる新興宗教。教義もそのための方便に過ぎない。

脚注

[1]

銀河英雄伝説の用語