銀河英雄伝説の登場艦船

銀河英雄伝説の宇宙艦船

本稿では、田中芳樹氏による壮大なSF小説『銀河英雄伝説』に登場する、宇宙軍艦および民間の宇宙船について解説します。原作小説を中心に、アニメ版やゲーム版で独自に設定された情報も交え、銀河英雄伝説の世界を彩る多様な艦船群を詳細に掘り下げます。

概要

作者である田中芳樹氏は、機械的なスペックよりも登場人物の個性を重視する作風を特徴としており、艦船の全長や武装などの具体的な数値設定は、アニメ化やゲーム化の際に新たに付与されたものが多く存在します。原作では一部の艦船に固有の名前が登場するのみで、艦級名や性能諸元などは、アニメ版とその資料集で詳細に設定されています。

作中では、亜空間跳躍航法、重力制御、慣性制御の技術が恒星間航行を可能にし、ビーム砲、レールガン、エネルギー中和磁場といった架空の兵器が登場します。艦船の動力源は核融合炉であり、戦闘における被弾や爆沈時には、核融合炉の爆発が描写されることがあります。また、ゼッフル粒子と呼ばれる架空の物質が、対人戦闘において白兵戦を重視させる要因として設定されています。

石黒監督版アニメでは、両軍共に戦闘艇以外の艦艇は、艦首に主砲が埋め込まれたデザインが特徴的です。メカニックデザインを担当した加藤直之氏は、潜水艦の戦闘をイメージし、砲塔を廃止しました。また、ミサイルランチャーは隠顕式を採用し、全体的に凹凸の少ないデザインとなっています。帝国軍の艦艇には、ブリュンヒルトのような流線型の美しいデザインも見られます。

艦種

作中には、戦艦、巡航艦、駆逐艦、宇宙母艦といった基本的な艦種に加え、補助的な艦種も登場します。帝国軍では、大将に昇進すると専用の旗艦が与えられます。乗員数は艦によって異なり、戦艦ネストルでは660名、ユリシーズでは140名といった描写があります。

戦闘艇は単座式であり、帝国軍のワルキューレ、同盟軍のスパルタニアンが登場します。ワルキューレはX字翼、スパルタニアンはビームとウラン238弾を武装としています。

各勢力の特徴

銀河帝国

帝国軍の艦艇は、領土内の治安維持任務も担うため、大気圏への降下・着陸が可能です。巡航艦以上の戦闘艦は、後方下部に三角形状の構造物を有し、センサーなどの機材が収納されています。また、天井の無い宇宙軍港に係留される様子が描写されています。同盟軍の艦艇と比較して、主砲門数が少なく、推進機関が分散配置されている点が特徴です。艦の側面には帝国国章が描かれ、一部の大貴族の乗艦には、直衛の「盾艦」が随伴します。

自由惑星同盟

同盟軍の艦艇は、純粋な戦闘を目的として設計されており、機能性と量産性を重視した直線的なユニット構造が特徴です。推進機関は遮蔽部に覆われており、RCSによる姿勢制御を行います。帝国軍艦艇と比較して、規模が小さく防御力は劣りますが、機動力に優れています。また、電子戦装備を設置するスペースが大きいため、電子戦能力は帝国軍艦艇を上回ります。艦隊司令官の座乗する旗艦級戦艦は、通信・指揮用のアンテナを多く持ち、主砲は最大80門に達することもあります。

各艦種の詳細

旗艦級戦艦

全長800m - 1,300m程度。多数の砲・ミサイルに加え、戦闘艇を30機程度搭載可能です。万隻単位の艦艇をコントロールするための機能が搭載されています。

盾艦

帝国軍のみに存在する艦種。防御力と機動性に特化しており、文字通り旗艦を守る盾となります。

標準型戦艦

全長650m程度。攻撃力・防御力共に高く、艦隊戦の主役です。分艦隊や小規模艦隊の旗艦に使用されることもあります。

宇宙母艦（空母）

巨艦であり建造数は少ないです。帝国軍の宇宙母艦はヴィルヘルミナ級旗艦級戦艦に格納庫ブロックを増設した形状で、同盟軍の宇宙母艦「ラザルス級宇宙母艦」はスパルタニアンを露天繋止する半開放型格納庫を採用しています。

巡航艦（巡洋艦）

会戦レベルの戦闘で最も数が多く、主力となります。現実世界の「巡洋艦」に相当します。

駆逐艦

防御は劣りますが機動性に優れています。哨戒や警備任務での登場が多いです。

ミサイル艦

打撃力こそ高いが防御が薄いと表現されています。

工作艦

戦場で損傷した艦を修理するための「ドック艦」と、陸戦における工兵の役割を担う「作業艦」の2種類があります。

輸送艦

輸送艦と補給艦を合わせた役割を担います。武装は自衛用の低出力レーザー砲群のみです。

従軍病院船

敵味方を越えた共通のマークが描かれています。非武装です。

強襲揚陸艦

敵艦に接舷して突入するための電磁石・ヒートドリルを正面に備えています。薔薇の騎士連隊（ローゼンリッター）はしばしばこの艦で敵艦に接舷して突入するという戦法を取ります。

強行偵察艦

帝国軍のみに存在し、艦首部に特殊センサーを装備しています。

雷撃艇、宙雷艇

軽快な動きで敵艦隊に突入する小型艦艇です。

単座式戦闘艇

ワルキューレとスパルタニアンが登場します。対艦戦闘では防御磁場の内側にまで侵入して超至近距離からレーザーを使い敵艦を「斬る」描写が見られます。

連絡艇（シャトル）

伝令や緊急脱出などに使用される他、作戦会議を開く際に分艦隊司令官や艦隊司令官を旗艦に集める移動手段としても用いられます。

Die Neue These

石黒監督版のデザインを踏襲しつつも、通常航行機関とワープドライブを別々に持つなど、細部に違いが見られます。艦隊各艦のデータリンクによって艦隊行動を制御している描写もあります。

勢力ごとの特徴（Die Neue These）

銀河帝国

推進器群が集中配備された艦尾部から比較的細い前部艦体が前方に伸びるリアヘビー形態をとり、全体的に曲線・曲面の多い形状となっています。

自由惑星同盟

推進器群と火器群が集中配備された艦首部から比較的細い後部艦体が後方に伸びるフロントヘビー形態をとり、直線・平面を基調とする形状を呈します。

艦艇一覧

本伝・外伝に登場する主な艦艇について、以下にまとめました。

銀河帝国

ブリュンヒルト
バルバロッサ
ケーニヒス・ティーゲル
トリスタン
パーツィバル
アースグリム
ヴィーザル
火竜（サラマンドル）

自由惑星同盟

ヒューベリオン
ユリシーズ
トリグラフ
リオ・グランデ
パトロクロス

その他、多くの艦艇が登場します。詳細は各艦艇の説明をご参照ください。

その他の情報源

より詳しい情報は、以下の書籍や資料をご参照ください。

『銀河英雄伝説 全艦船メカニカル・フォト・ファイル』
『銀河英雄伝説事典』
『銀河英雄伝説DATA BOOK メカニック&声優大事典』
* 『銀河英雄伝説 Die Neue These 公式設定資料集』

これらの情報源を活用することで、銀河英雄伝説の世界をより深く理解することができるでしょう。

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