鋤田正義

鋤田正義は、1938年5月5日に福岡県直方市で生まれた、日本を代表する写真家、スチールカメラマン、そして撮影技師です。日本写真映像専門学校を卒業後、棚橋紫水に師事し、その技術を磨きました。その後、大広やデルタモンドといった広告代理店で実績を積み、1970年にフリーランスとして独立しました。

特に、鋤田がT・レックスに魅せられ単身渡英し、独自の撮影に成功したことは、彼のキャリアにおいて大きな転換点となりました。この時に出会ったデヴィッド・ボウイとの関係は深く、撮影した写真の一枚は、ボウイのアルバム『英雄夢語り』のジャケット写真に採用されるなど、その才能は国際的にも認められました。

日本国内では、ドキュメンタリー、広告、映画、音楽と幅広いジャンルで活動を展開しました。広告の仕事を通じて親交を深めた杉山登志からは、ポートレートを撮ることを唯一許された人物としても知られています。現在残されている杉山の写真のほぼ全てが鋤田の手によるもので、これは彼の卓越した技術と信頼の証と言えるでしょう。また、無数のカセットテープで構成された巨大ロボットにYMOが入っているCMなど、印象的な作品も数多く手がけています。

映画・映像分野では、『書を捨てよ町へ出よう』で撮影監督を務めたほか、是枝裕和監督作品のスチールを担当するなど、映画界でもその才能を発揮しています。音楽分野では、YMO、忌野清志郎、シーナ&ザ・ロケッツ、高中正義など、数多くのミュージシャンを対象にした作品を制作し、音楽シーンにも深く関わってきました。

近年も国内外で精力的に写真展を開催しており、2012年に渋谷パルコで開催された「きれい」展以降はシリーズ化されています。2013年には大阪心斎橋ビッグステップで「SOUND & VISION + きれい」展が開催され、これまでのシリーズ作品に加え、未公開作品を含む300点が展示されました。この展示では、2012年に亡くなった桑名正博の写真コーナーも設けられ、多くの人の記憶に残る企画となりました。

鋤田は、デヴィッド・ボウイをはじめ、撮影したアーティストとの間に深い信頼関係を築くことで知られています。彼の写真展には、著名なアーティストがプライベートで訪れることも多く、彼の人間性と才能が、多くの人々を魅了している証と言えるでしょう。

鋤田正義の主な作品集には、沢田研二写真集『水の皮膚』、土屋昌巳写真集『Alone』、デヴィッド・ボウイ写真集『氣』、イ・ビョンホン写真集『パリイ』などがあります。また、『T.Rex 1972 Sukita』、『YELLOW MAGIC ORCHESTRA × SUKITA』、『SOUL忌野清志郎』、『鋤田正義サウンドアンドヴィジョンきれい』など、彼の幅広い活動を記録した作品も数多く存在します。

主な展覧会としては、1972年の「T.REX写真展」をはじめ、1992年「PICTURE SHOW写真展」、1999年「ワンダフルライフ写真展」、「T.REX写真展」などがあります。海外では、2002年にロンドンのプラウド・ギャラリーズで「MARC BOLAN & T.REX The Essential Collection」に写真を出品、2009年にはニューヨークのブルックリン・ミュージアムで「Who shot Rock&Roll」に参加しました。2012年には、東京都写真美術館で「SOUND & VISION」展、渋谷パルコで「きれい」展を開催し、大きな反響を呼びました。2013年にはロンドンで「Masayoshi Sukita:Photographs of David Bowie by 1972 to 2002」展を開催するなど、その活動はグローバルに展開されています。また、故郷である福岡でも、写真展「きれい」や「RETROSPECTIVE SOUND & VISION スペシャルインスタレーション」を開催し、地元への貢献も続けています。

近年では、鋤田とその被写体、および周辺の人物が出演するドキュメンタリー映画『SUKITA 刻まれたアーティストたちの一瞬』が制作され、相原裕美監督によって彼の人物像が深く掘り下げられています。鋤田正義は、長年にわたり写真家として、時代を彩るアーティストたちの魅力を捉え続けており、その作品はこれからも多くの人々に感動を与え続けるでしょう。

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