錦町 (仙台市)

錦町（にしきちょう）

宮城県仙台市青葉区に属し、現在は錦町一丁目および二丁目として住居表示が実施されています。2025年4月1日時点の人口は3,249人、世帯数は1,967世帯です。

仙台市の中心部から見て北側に位置する錦町は、東は宮町、北は上杉、西と南は本町、そして南側の一部は花京院に隣接しています。この地域は、かつて「長丁（ながちょう）」と呼ばれた歴史を持つ土地であり、現代ではその利便性の高い立地から、多くのオフィスビルやマンションが立ち並ぶビジネス・住宅エリアとなっています。

町内の区画は、愛宕上杉通や定禅寺通といった主要な幹線道路に面した部分は比較的大規模な建物が多い一方、内部に入ると細い道が多く、ほとんどが一方通行となっています。これらの幹線道路沿いは、宮城県庁をはじめとする行政機関や国の出先機関が集まる勾当台地区に近接しており、都心機能の一部を担う重要な地域です。

歴史的な変遷

錦町の歴史は古く、藩政時代には「長丁（ながちょう）」と呼ばれていました。この名称は、西端を同心町通、東端を東六番丁通とする道路を指すと同時に、沿道の町名としても使われ、主に武士が暮らす侍町でした。

長丁は、仙台城下の中心部が広がる仙台中町段丘よりも一段高い上町段丘に位置していました。両段丘の間には高低差のある段丘崖が存在し、長丁から城下中心部への往来には、同心町通を北上して迂回するか、南下して段丘を下る必要があり、交通の便は決して良くありませんでした。

明治時代に入り、戊辰戦争による仙台藩の減封、そして廃藩置県という大きな社会変化が訪れます。これにより、勾当台地区にあった藩校「養賢堂」は宮城県庁に転用され、周辺には宮城師範学校、仙台鎮台病院（後の陸軍病院）、宮城書籍館、仙台区役所（後の仙台市役所）など、新たな公的機関が集積するようになります。

明治中期になると、定禅寺付近の段丘崖が開削され、崖下の定禅寺通東端と崖上の長丁西端を結ぶ新しい道路が開通しました。これにより勾当台地区との連絡が大幅に改善された長丁は、かつての侍町から次第に商店街へと性格を変えていきました。

「錦町」の誕生と現代へ

大正時代後期から昭和初期にかけて、仙台市内には「仙台市長丁」と、広瀬川南岸にあった旧長町宿を継承した「仙台市長町（ながまち）」という、読みも漢字も似た町名が存在し、郵便物の誤配など混乱が生じていました。特に、鉄道駅があり知名度の高かった長町との区別が求められました。

このような状況の中、1935年（昭和10年）に市民からの新町名募集が行われ、その結果、「錦町（にしきちょう）」が新たな町名として採用されました。これにより、「長丁」の名称は町名としては廃止され、市電の停留所名も「光禅寺通駅」から「錦町駅」に改称されました。

第二次世界大戦後の復興期には、戦災復興事業の一環として、現在の愛宕上杉通となる新たな道路が整備され、これが錦町の西側の境界となりました。

1970年（昭和45年）には、仙台市都心部で住居表示が施行されました。これにより、道路名を町名とする方式から、道路に囲まれた区域を街区とする方式に変更され、現在の錦町一丁目・二丁目が成立しました。この際、旧錦町（道路名）の南側区域は本町などとなり、旧町名であった新小路や同心町通などの一部が新たな錦町区域に取り込まれました。

1982年（昭和57年）の道路愛称命名事業により、錦町（道路名）の一部は「定禅寺通」の愛称がつけられましたが、東側部分には愛称は与えられず、道路名としての「錦町」や「長丁」は一般的には使われなくなりました。

現在の錦町

錦町は、その都心に近接する立地から、宮城県内で最も地価が高い地域の一つとして知られています。

主な施設としては、仙台外記丁団地、宮城厚生協会 仙台錦町診療所、仙台市役所錦町庁舎、東北特定郵便局長会館などがあります。

かつては、仙台市電の錦町駅や、GHQによって開設されたラジオ局AFRS仙台、みやぎ婦人会館、仙台錦町郵便局、NHK仙台放送局などもこの地に存在しました。

興味深い点として、広大な敷地を持つ錦町公園は、名称に「錦町」を冠しながらも、実際には隣接する本町に所在しています。また、冷やし中華の発祥の店として知られる「龍亭」や、人気のつけ麺店「しずく」もこの錦町にあり、多くの人々で賑わっています。

侍町として始まり、都市の変遷を経て近代的な様相を呈する錦町は、仙台の歴史と現代が交錯する魅力的な地域と言えるでしょう。

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