鍵 (1959年の映画)

映画『鍵』の概要と評価

概要

映画『鍵』は、1956年に谷崎潤一郎が発表した同名の小説を原作として、1959年に市川崑が監督の下に製作された日本の長編映画です。大映の東京撮影所が製作を担当し、公開日は6月23日でした。また、併映の短編として『桂離宮』が上映される一方、翌日から『二十四時間の情事』も一部の劇場で公開されました。この作品は、映画倫理管理委員会（現在の映画倫理委員会）から成人映画に指定され、18歳未満の観賞が制限されるなど、その内容の大胆さが当時の社会に波紋を広げました。特徴的な惹句は「愛欲描写の凄まじさに、映画化不可能を叫ばしめた谷崎文学の完全映画化！」というものでした。

製作の背景

映画化に向けた最初の試みは大映の制作陣によってスタートしましたが、原作の内容が引き起こした社会的議論から、その進行は一時的に滞りました。谷崎が映画化を一旦拒否したこともあり、1年ほど時が経過しました。再び映画化の話が持ち上がった際には、谷崎の友人であり映画評論家の淀川長治が市川に連絡して了解を得るための仲介役を務めました。谷崎は、国会での騒動が沈静化し、経済的な理由で映画化を許可すると決断しました。

独自の演出

市川崑監督は、原作が持つ耽美主義をそのまま映画にすると、単なる劣悪なダイジェストになってしまうと考え、作品を一種のミステリーとして解釈しました。これにより、原作のテーマやキャラクターの深層的な意味を異なる角度から提示する意図が示されました。完成した脚本を受け取った谷崎は微妙な違和感を感じたものの、制作は続行されました。

映画の評価

公開後、本作は国内での口コミや評価が高まり、映画史上の名作となりました。また、多数の国内外の賞を受賞しています。特に第13回カンヌ国際映画祭では審査員賞を獲得し、ゴールデングローブ賞の外国語映画賞も受賞するなど、国際的にも評価されました。しかし、フランスの映画史家ジョルジュ・サドゥールのように、映画の内容やその姿勢に対する批判も少なくなく、賛否が分かれる結果となりました。

キャストとストーリー

キャストでは、郁子役を京マチ子が、木村役を仲代達矢が演じ、他にも名だたる俳優陣が揃いました。映画のあらすじは、古美術鑑定家の剣持とその家族の複雑な人間関係を描いています。剣持は木村を娘の婿にしたいと考えていますが、妻の郁子は木村と密かに関係を持っています。物語は途中で様々な事件が展開し、最終的には登場人物たちに悲劇が襲いかかるという緊迫したものとなっています。

リメイクと現在の状況

本作は、その後もいくつかのリメイク作品が制作されています。2012年6月時点でも東京国立近代美術館フィルムセンターが本作の上映用プリントを所蔵しており、DVDも普及しているため、観覧の機会は現在も存在します。初期の成人映画として新しいフィルム技術と美的感覚を融合させたこの作品は、時代を超えた影響を与え続けているといえるでしょう。

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