鎌倉車両センター

概要

神奈川県に位置する東日本旅客鉄道（JR東日本）首都圏本部の鎌倉車両センターは、多様な路線で活躍する多数の車両が配置されている、首都圏における重要な車両基地の一つです。

その起源は、1960年3月29日に開設された大船電車区に遡ります。当初は横須賀線用の車両基地として運用を開始しました。その後、組織の再編が進み、車両基地機能と検修機能を担う部署が大船工場と一体化し、鎌倉総合車両所、そして鎌倉総合車両センターへと名称を変更していきました。この統合期には、広大な敷地が道路や河川で隔てられていたため、車両基地としての機能を持つエリアを「長島地区」、そして車両工場機能が集まるエリアを「深沢地区」と呼び分けていました。しかし、深沢地区の工場機能が廃止されたことにより、現在、長島地区にあたる部分が鎌倉車両センターとして運営されています。

組織と機能

鎌倉車両センターは、神奈川県鎌倉市および藤沢市にまたがる本区を中心に、複数の派出所や支所によって構成されています。

本区では、主に車両の日常的な検査である仕業検査や、機能を維持するための機能保全業務が行われています。大船駅からは直接入出区が可能で、専用の入出区線が東海道本線沿いに延びています。かつて、深沢地区（大船工場）へ車両を移動させる際は、敷地が離れていたため大船駅構内で二度のスイッチバックを行う必要がありました。また、本線での車両トラブル発生時などに迅速に対応するため、横浜駅構内には横浜派出所、大船駅構内には大船ホーム検査、そして逗子駅構内には逗子派出所が設置されています。

本区以外にも、以下の派出所・支所が重要な役割を担っています。

東神奈川派出所：横浜市神奈川区に位置し、京浜東北線や横浜線の車両が留置される8本の電留線を有しています。元々は運転士も所属する東神奈川電車区でした。
橋本派出所：相模原市緑区、橋本駅の相模原寄りに位置し、横浜線の車両が留置されます。11本の電留線を持ち、最大88両を収容可能です。交番検査線2本と洗浄線1本を備えていますが、修繕線はありません。ここでは日常的な検査や清掃作業が行われています。かつて、この派出所への入出区列車と駅を通る他の列車との兼ね合いで「開かずの踏切」が発生し交通渋滞の原因となっていましたが、道路の地下化により解消されています。
磯子派出所：横浜市磯子区、磯子駅の北東側にあり、11本の留置線があります。
中原支所：川崎市中原区に位置し、南武線の車両が出入区する拠点です。武蔵中原駅と武蔵新城駅の間に並行しており、武蔵中原駅から出入区が行われます。元々は中原電車区でしたが、組織改正を経て現在の形となりました。

本区構内

本区の構内は、東海道本線の大船駅 - 藤沢駅間の線路の南側に広がっています。

構内には、車両を収容する収容線（1番から10番）、車両の洗浄を行う洗浄線（1番から3番。手洗浄台も設置）、交番検査や仕業検査、機能保全を行う交検線（1番から3番、交検庫併設）、そしてその他用途の庫線（4番から7番）などが配置されています。

収容2番線は車輪転削庫に繋がっており、11両編成のまま車輪を削正することが可能です。庫4番線および5番線は台検庫として使用され、リフティングジャッキを備えて機器の吊り替えや修理などが行われます。また、庫7番線は、かつて車輪転削庫があった場所の床を復元して臨修庫として利用されています。入出区線には自動の車両洗浄機も設置されています。一部の業務については、JR東日本運輸サービスに委託されています。

沿革

1957年9月 - 大船電車区の建設が始まります。
1960年3月29日 - 大船電車区として使用を開始し、田町電車区から横須賀線用車両が移管されました。
1987年4月1日 - 国鉄分割民営化に伴い、東日本旅客鉄道に移管されます。
1996年 - 横浜支社の設置に伴い、蒲田電車区から橋本派出所と磯子派出所が移管されました。
2000年7月1日 - 大船電車区の運転士部門が大船車掌区と統合され大船運輸区として分離。車両の検修部門は大船工場と統合され、鎌倉総合車両所が発足しました。
2004年6月1日 - 鎌倉総合車両センターに改称されます。
2006年4月1日 - 深沢地区の工場機能が廃止され、長島地区が現在の鎌倉車両センターとなりました。

配置車両

2025年2月20日現在、以下の車両が本区に配置されています。

E259系（132両）：6両編成22本が所属しており、主に特急「成田エクスプレス」として運用されています。253系の後継として導入され、リニューアルされた一部編成は特急「しおさい」でも活躍しています。
E217系（34両）：横須賀線・総武快速線および直通各線で運用される車両です。11両の基本編成2本と4両の付属編成3本が配置されています。かつては幕張車両センターにも所属していましたが、現在は全て本センターの所属となっています。後継となるE235系への置き換えが進行中です。
E233系（224両）：6000番台の8両編成28本が所属し、横浜線の各駅停車や快速列車で運用されています。2014年に205系を置き換えるために投入されました。拡幅車体を採用しており、6扉車はありません。
E235系（715両）：横須賀線・総武快速線および直通各線で運用される最新形式です。1000番台の11両基本編成49本と4両付属編成44本が所属しています。E217系の置き換え用として、2020年から順次導入が進められています。

過去の配置車両

大船電車区および鎌倉車両センターには、その歴史の中で多くの車両が配置されてきました。横須賀線・総武快速線用としては、長きにわたり運用された113系が1998年まで所属していました（東海道線用113系はSM分離で国府津へ移管）。初代「成田エクスプレス」として活躍した253系もE259系への置き換えにより引退し、一部は他社へ譲渡されました。横浜線では、現在のE233系投入まで205系が運用されていましたが、2014年までに営業運転を終了しました。

その他、大船電車区開設当初に横須賀線用として配置された70系や80系、様々な形式の旧型国電（30系、31系、32系、40系、42系、50系、72系など）が一時的に多数所属していましたが、多くは後に地方線区へ転出しました。構内入換用や職員輸送用として使用された牽引車クモヤ143形や、様々な形式のクモヤ、クモハなども過去に配置されていました。

略号

配置車両に記される略号は、時代によって変遷しています。

国鉄時代の大船電車区：東フナ → 南フナ → 東フナ
JR東日本 横浜支社時代の大船電車区：横フナ
鎌倉総合車両所、鎌倉総合車両センター時代：横クラ
* 現在の鎌倉車両センター：当初 横クラ でしたが、組織変更により現在は 都クラ （首都圏本部＋鎌倉）となっています。

鎌倉車両センターは、その長い歴史の中で組織や配置車両を変化させながらも、首都圏の鉄道ネットワークを支える基盤であり続けています。

もう一度検索