鎌田正蔵

鎌田正蔵：シュールレアリスムの探求者

鎌田正蔵（1913年-1999年）は、日本の洋画家であり、シュールレアリスム（超現実主義）を代表する画家の一人です。島根県松江市に生まれ、その後福島県三春町で育ちました。1927年、旧制田村中学校（現福島県立田村高等学校）に入学、1934年には東京美術学校（東京藝術大学）油画科に進学し、岡田三郎助に師事しました。同級生には、杉全直、若松光一郎、土橋淳、鈴木新夫らがおり、1年後輩には佐藤忠良がいました。

東京美術学校在学中の1937年、石原寿市、加藤太郎、杉全直らとシュールレアリスム運動に影響を受けたグループ「貌」を結成。翌年には東京美術学校を卒業し、「貌」の同人誌『JEUX D'ESPRIT』を発行しました。第二次世界大戦中は応召されましたが、1945年に復員。戦後、若松光一郎、熊坂太郎、鈴木新夫らと共に新青会を結成しました。

1947年からは福島県立安積女子高等学校で教諭として勤務を始め、1948年には第2回福島県総合美術展で特選・福島県知事賞を受賞するなど、画家としての活動も開始しました。1952年には新制作協会展に入選し、以後1998年まで毎年出品を続けました。1954年には郡山市にアトリエを構え、創作活動に専念しました。1956年には第20回新制作協会展で新作家賞を受賞し、協友となりました。1966年には新制作協会会員に推挙され、1968年には福島県立安積女子高等学校を退職し、郡山女子大学教授に就任しました。

教職のかたわら、精力的に国内外を旅し、作品制作に役立てました。1973年には若松光一郎と共に南ヨーロッパ、1976年にはギリシャ、1978年にはサンティアゴ・デ・コンポステーラを巡礼するなど、古代ギリシャ美術やロマネスク美術など幅広く研究しました。1979年には若松光一郎と共に東ドイツを訪れました。

鎌田正蔵の作品は、シュールレアリスム的な要素と、日本の伝統的な美意識が融合した独特のものです。彼の作品は、現実と非現実が交錯する幻想的な世界を描写し、見る者に深い印象を与えます。多くの作品は福島県立美術館、郡山市立美術館、小野町ふるさと文化の館美術館などに収蔵されています。

1994年には郡山市文化功労賞を受賞。1996年には画業60年を記念した個展を開催しました。1999年7月15日、85歳で亡くなりました。没後も、その作品は高い評価を得ており、多くの展覧会で紹介されています。鎌田正蔵は、日本のシュールレアリスムを代表する画家として、後世に大きな影響を与え続けました。彼の作品は、現実と幻想の境界を曖昧にすることで、人間の潜在意識や深層心理を探求する試みとして評価されています。

グループ「貌」

「貌」は、1937年に東京美術学校油画科の学生たちが結成したグループです。鎌田正蔵を始め、杉全直、加藤太郎、高橋善八、杉原正巳、山本占太郎、福留五郎、日向裕、石原寿市、山元恵一、白瀧彰彦、若松光一郎らがメンバーでした。このグループは、国外のシュールレアリスム運動に強い影響を受け、独自の表現を追求しました。

主な収蔵先

福島県立美術館
郡山市立美術館
* 小野町ふるさと文化の館美術館

鎌田正蔵の作品は、日本のシュールレアリスム史において重要な位置を占め、彼の功績は多くの美術史研究者によって高く評価されています。彼の画業は、シュールレアリスムという表現様式を通して、人間の精神世界の深淵を追求し続けた、長く記憶されるべき業績と言えるでしょう。

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