鎧橋

鎧橋：歴史と伝説が息づく日本橋の架け橋

鎧橋は、東京都中央区の日本橋川に架かる橋で、日本橋小網町、日本橋兜町、日本橋茅場町を結び、東京証券取引所にも近い場所に位置しています。しかし、現在では上空を首都高速道路の高架橋に覆われています。

鎧橋の歴史

その昔、この地域は茅の生い茂る沼地でしたが、江戸時代に徳川家康の江戸城築城計画に伴い埋め立てられました。橋が架かる以前は、「鎧の渡し」と呼ばれる渡船が両岸を結んでいました。鎧橋の名前の由来には二つの説があります。

源頼義が奥州討伐の際に暴風雨に見舞われ、鎧を海中に投じて竜神に祈ったところ、風が鎮まったという説
平将門が兜と鎧を奉納したという説

鎧の渡しは約50メートルの距離で、賃料は1人1文でしたが、武士、僧侶、山伏、医者は無料でした。嘉永3年（1850年）には、江戸町奉行に賃料の値上げを訴えた記録が残っており、当時の渡し船の運営状況を知ることができます。記録によると、極印のある渡し船は2艘、船頭は4人（日給150銭＋食事代150銭）、運賃徴収役は2人（日給53銭＋食事代150銭）でした。有料の利用者は1ヶ月に3万7千人にも上り、近くの無料の江戸橋を利用する人も多かったことを考えると、1日に1200人以上の有料利用者がいたことになります。しかし、人件費だけで歳出の85%を占めるほどの赤字経営であり、特に日本橋川は通船が多く、腕の良い船頭を雇わざるを得ない事情から、人件費を削減することが困難でした。

鎧橋の変遷

1872年（明治5年）に、三井、小野、島田の豪商3名が費用を出し合って初代の橋が建設されました。橋の周辺には江戸時代から米問屋や酒問屋が多く、1871年には第一国立銀行本店、1878年には東京証券取引所の前身である東京株式取引所が開設されるなど、商業の町として発展しました。1888年（明治21年）にはトラス橋に架け替えられ、路面電車が走るようになりましたが、1946年（昭和21年）に老朽化のため都電の通行は終了しました。現在のゲルバー桁橋は、1957年（昭和32年）7月に架け替えられたものです。

鎧橋は、その名が示すように、古くからの歴史と伝説を受け継ぎながら、時代の変化と共に姿を変えてきました。現在では首都高速の高架下にひっそりと佇んでいますが、かつては江戸の商業を支える重要な役割を担っていた橋なのです。

日本橋川に架かる他の橋には、上流から江戸橋、茅場橋があります。

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