鎮西反乱

鎮西反乱：平家支配を揺るがした九州の動乱

鎮西反乱は、治承4年（1180年）9月から寿永元年（1182年）4月にかけて、九州北部で繰り広げられた反平家の武力闘争です。この反乱は、源平合戦（治承・寿永の乱）の戦乱の一部であり、東国での源氏の挙兵と同時期に発生しました。

反乱の勃発と拡大

反乱の火蓋を切ったのは、肥後国の豪族である菊池隆直でした。以仁王の令旨に応じ、源頼朝や源義仲らが各地で挙兵する中、隆直も平氏打倒を目指し立ち上がりました。この動きに、阿蘇惟安や木原盛実といった同じく肥後の武士たちが呼応し、反乱勢力は拡大しました。

翌治承5年（1181年）に入ると、反乱はさらに激化し、2月には反乱勢力が大宰府を焼き討ちにするという事態にまで発展しました。平家は、鎮西への派兵を検討するも、畿内や美濃、尾張で発生していた反乱に対処せざるを得ず、鎮西へ兵を送ることができませんでした。

その間にも、反乱は九州各地に広がり、豊後国では臼杵惟隆、緒方惟栄兄弟が反乱を起こしました。平家は、鎮西の反乱を鎮圧するために、筑前の親平家豪族である原田種直を太宰権少弐に任命し、鎮圧を試みましたが、効果は上がりませんでした。

平貞能による鎮圧と反乱の終結

事態を重く見た平家は、養和元年（1181年）8月に平貞能を鎮西に派遣し、反乱の鎮圧を本格的に開始しました。貞能は約1年をかけて鎮西の平定活動を行い、最終的には寿永元年（1182年）4月頃、菊池隆直が貞能に降伏したことで、鎮西の反乱は一応の終結を迎えました。

しかし、この反乱によって平氏の鎮西における支配基盤は大きく揺らぎ、弱体化することとなりました。

反乱後の影響

菊池隆直降伏後も、平貞能は九州に留まっていましたが、寿永2年（1183年）に源義仲が都に迫る勢いを見せると、貞能は鎮西の軍勢を率いて上洛しました。その後、平家は都落ちを余儀なくされ、最初に目指したのが九州でした。

しかし、貞能によって平定されたはずの鎮西の豪族たちは、都落ちした平家に対して非協力的、あるいは敵対的な態度を取りました。その結果、一時的に鎮西に上陸した平家は、そこから追い出されることになりました。

鎮西反乱は、平氏政権の衰退を象徴する出来事の一つであり、その後の源氏の台頭を促す要因の一つとなりました。この反乱は、地方豪族の力が、中央政権の動向を左右するほど大きくなっていたことを示しています。

参考資料

* 上杉和彦 『日本の戦争史 6 源平の争乱』 吉川弘文館、2007年。

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