鏡島村

かつて岐阜県の南西部に位置し、稲葉郡に属していた鏡島村は、現在の岐阜市西部、雄大な長良川の東岸および南岸に広がる地域をその領域としていました。この地は、かつては川に囲まれた地形から「乙津島（おつしま）」とも呼ばれていたと伝えられています。

村名の由来

鏡島という地名の起こりについては、弘仁4年（813年）に遡る興味深い伝承が残されています。伝えられるところによれば、当時の嵯峨天皇の命を受けた高僧・空海（弘法大師）がこの地に赴き、龍神を鎮めるための秘法を修しました。その際、空海が水面に鏡をかざしたところ、それまで水中にあった場所が忽ち桑畑へと姿を変えたといいます。この出来事に由来して、この地は鏡島と名付けられたと語り継がれています。

歴史

江戸時代、この地域は美濃国厚見郡の一部として認識されていました。しかし、その支配体制は一元ではなく、西鏡島村は幕府直轄の天領、東鏡島村と江崎村は加納藩の領地として分かれて統治されていました。幕末期には、一部資料によれば西鏡島村も加納藩領となっていた時期があったようです。

明治時代に入り、行政区画の近代化が進められます。明治5年（1872年）には、長らく東西に分かれていた鏡島村が一つに統合され、新たな鏡島村が誕生しました。その後、明治22年（1889年）7月1日には町村制が施行され、自治体としての鏡島村が正式に発足しました。さらに明治30年（1897年）4月1日、厚見郡、各務郡、方県郡の一部が統合され、新たに稲葉郡が設けられます。同日には、鏡島村と近隣の江崎村が合併し、再び鏡島村として再編成されました。村はその後も存続しましたが、昭和の時代に入ると、市町村合併の流れの中でその姿を変えることとなります。昭和30年（1955年）2月11日、鏡島村は岐阜市に編入されることとなり、約66年間の自治体としての歴史に幕を閉じ、その名は行政区画としては消滅しました。

村にあった主な施設と交通

教育施設としては、村立の鏡島小学校がありました。これは現在の岐阜市立鏡島小学校の前身にあたります。

交通網としては、名古屋鉄道の鏡島線が村内を走り、地域住民の重要な移動手段となっていました。この路線上には、東鏡島駅、弘法口駅、鏡島駅、港駅、合渡橋駅といった複数の駅が設けられており、活発な往来が見られました。

旧跡・名所

鏡島村とその周辺地域には、歴史的な旧跡や地域のシンボルとなる場所が点在しています。空海の伝承にもゆかりのある古刹・乙津寺は、地域の信仰を集めてきました。また、大河戸神社も地域の重要な神社の一つです。長良川を渡る小紅の渡しは、かつての交通の要衝であり、今もその名が残されています。さらに、関ヶ原の戦いの前哨戦の一つとして知られる河渡川の戦いの舞台となった場所もこの地域に位置しています。

鏡島村は行政区画としては姿を消しましたが、その歴史や文化、そして地域に根差した伝承は、現在の岐阜市鏡島地区に静かに受け継がれています。

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