鑪幹八郎

鑪幹八郎：日本の心理臨床に多大な貢献をした心理学者

鑪幹八郎博士（1934年8月3日 - 2021年5月7日）は、日本の心理学界に大きな足跡を残した著名な心理学者、臨床心理士です。広島大学名誉教授、京都文教大学名誉教授、そして同大学学長を歴任したほか、日本心理臨床学会理事長も務めるなど、教育者、研究者、そして臨床家として幅広く活躍しました。

熊本市に生まれた鑪博士は、熊本大学教育学部を卒業後、京都大学大学院に進学。教育心理学専攻で博士課程単位取得満期退学という経歴を持ちます。その後、京都大学教育学部助手としてキャリアをスタートさせました。

彼のキャリアの転機となったのは、1964年から1967年にかけてのアメリカ、ウィリアム・アランソン・ホワイト研究所での精神分析の訓練です。この経験は、後の彼の研究や臨床活動に大きな影響を与えました。帰国後は大阪教育大学助教授を経て、1971年に広島大学教育学部助教授に就任、1983年には教授に昇進します。

研究活動においては、1968年に「学校恐怖症に関する研究」で京都大学より教育学博士号を取得。その後も精力的に研究を続け、数々の論文を発表しました。また、1979年から1981年にかけてはオースティン・リッグス・センター研究員として海外での研究活動にも従事しました。

教育活動では、後進の育成にも尽力しました。広島大学での教授職の後、京都文教大学人間学部臨床心理学科教授、京都光華女子大学教授を歴任し、2008年には京都文教大学学長に就任。長年にわたり、多くの学生を指導し、臨床心理学者育成に貢献しました。

学会活動では、日本心理臨床学会理事長を1997年から2000年、そして2003年から2006年と二度務め、日本の心理臨床の発展に大きく貢献しました。その功績は高く評価され、2002年には日本心理臨床学会賞、2004年には日本精神分析学会賞を受賞しています。2015年には瑞宝中綬章を受章しました。

豊富な臨床経験に基づいた著書も多く執筆しています。単著として『カウンセラーのための精神分析』、『夢分析入門』など、臨床心理に関わる重要なテーマを分かりやすく解説した作品から、より専門的な内容を扱うものまで幅広く執筆しました。編著も多く手がけ、日本の心理臨床の分野に多大な貢献をしました。翻訳活動にも積極的に取り組み、海外の優れた精神分析に関する書籍を日本語で紹介する役割も担いました。

鑪博士は、日本心理学会、日本心理臨床学会、日本精神分析学会、そしてアメリカのThe William Alanson White Psychoanalytic Society、The American Psychological Association、The American Academy of Psychoanalysisといった国際的な学会にも所属し、国際的な交流にも積極的に参加しました。

2002年から2008年にかけては、彼の著作集がナカニシヤ出版から刊行されました。これは、彼の生涯の研究成果をまとめたもので、後世への貴重な遺産となっています。彼の業績は、日本の心理学、特に臨床心理学の分野に大きな影響を与え、その功績は長く記憶されるでしょう。

彼の孫、鑪匠造氏も、現在活躍している人物です。

鑪幹八郎博士は、教育者、研究者、臨床家としての多様な顔を持ち、日本の心理学の発展に大きく貢献した、まさに巨人と言える存在でした。彼の功績は、これからも心理学を学ぶ者にとって、重要な指標であり続けるでしょう。

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