長井利隆

斎藤利隆：謎に包まれた戦国武将の生涯

斎藤利隆は、戦国時代を生きた武将です。その生没年をはじめ、詳細な生涯については不明な点が多く、歴史の闇に隠された人物と言えるでしょう。本稿では、現存する史料を基に、斎藤利隆の生涯と人物像を多角的に考察します。

史料から読み解く斎藤利隆

斎藤利隆に関する最も古い記録は、明応9年（1500年）の善性尼の法要に関する文書です。この文書によると、善性尼は斎藤利綱と利隆の母とされていますが、母子関係や利綱との兄弟関係については、実子・養子、実兄弟・義兄弟など、明確な記述がありません。その後、永正2年（1505年）、永正5年（1508年）、永正8年（1511年）と、史料に「藤原利隆」の名が登場します。しかし、永正14年（1517年）7月以降は「妙全」という名前になり、大永7年（1527年）には「持是院妙全」、天文7年（1538年）には「持是院法印権大僧都岱宗全公大和尚」と、僧侶としての表記に変わっていきます。

この名前の変化は、斎藤氏内部の権力構造や利隆自身の境遇の変化を反映していると考えられます。永正9年（1512年）、持是院家の当主が内紛により尾張国に亡命した際、美濃国に残された一族は若年であったため、長老格であった利隆が、実兄か義兄弟であった斎藤利綱と共に、一族をまとめる役割を担った可能性が高いです。

軍記物における斎藤利隆

一方、軍記物では、斎藤利隆は竹ヶ鼻城の城主（文明10年頃～明応5年）として登場します。その後、守護代・斎藤利親の戦死により、その跡を継いだ利親の子・利良が幼少であったため、長井藤左衛門尉長弘と共に利良を補佐したとされています。また、『美濃明細記』には、土岐政房、土岐政頼、土岐頼芸の執権として利隆の名が記されています。明応6年（1497年）には、利良の後見のため、竹ヶ鼻城から加納城に移ったと伝えられています。

永正13年（1516年）2月には、日善上人の法弟とされる日護房を美濃国に招き、常在寺の住職に任命したという記録も残されています。土岐家督争いにおいては、土岐頼芸方に属し、頼芸が川手城から大桑城に移ると、川手城の城代として配置されました。没年は永正12年（1515年）71歳説と天正2年（1530年）説があり、墓所は汾陽寺とされています。

書状と斎藤利隆

瑞林寺文書、汾陽寺文書、八幡神社文書など、複数の書状に「藤原利隆」または「斎藤利隆」、「長井利隆」の名で、寺社への禁制が発せられています。これらの文書は、利隆が政治・宗教両面で一定の影響力を持っていたことを示唆しています。

斎藤道三との関係

『江濃記』、『美濃国雑事記』、『美濃明細記』、『岐阜軍記』など、複数の史料には、斎藤利隆と斎藤道三の関係について、様々な記述があります。これらの史料を総合的に見ると、利隆は長井藤左衛門尉長弘の父であり、道三の祖父もしくは義父である可能性が考えられます。しかし、どの説が正しいのか、現在のところ断定することはできません。

結論

斎藤利隆は、史料の不足から、その生涯の全貌が明らかになっていない謎多き人物です。しかし、現存する史料を丹念に分析することで、その存在感と時代背景をある程度推測することができます。今後、新たな史料の発掘や研究の進展によって、より詳細な人物像が明らかになることが期待されます。

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