長右衛門

長右衛門の漂流と小笠原諸島への影響

漂流の始まり

江戸時代中期の寛文9年（1669年）11月15日、長右衛門を含む7名が乗った船は紀伊国宮崎（現：和歌山県有田市宮崎）を出発しました。船主の勘左衛門が船頭を務め、長右衛門はミカンの荷主として同船していました。航海は順調に進み、潮岬を経て志摩国の安乗浦（現：三重県志摩市）に到達しました。しかし、出発から間もなく、寛文10年1月6日（1670年1月27日）に遠州灘で遭難してしまいます。

船は流され続け、乗組員たちは持っていた米を短期間で食べ尽くし、以降はミカンや釣った魚を頼りにしのぎました。2月20日（4月9日）頃、彼らは無人島と呼ばれる母島にたどり着きます。初めての上陸を果たした彼らは水を探し、飲んだ後に全員が疲れ果てて眠りに落ちます。しかし翌朝、船頭の勘左衛門はそのまま命を落としてしまいました。こうしてチームは6名になりました。

新たな船の建造

残された6人は、ウミガメや鳥を使い食料を確保しつつ、島の探索を行い、破損した船の廃材を集めて新しい船の建造を試みました。探索中に見つけた和船の残骸を利用して、約50日間かけて四反帆の船を完成させます。

完成した船を用意し、彼らは北西に見える父島を目指して旅立ち、その夜に無事到着しました。父島には約6日間滞在した後、再び出航して別の島である聟島列島に向かいました。この島でも数日滞在し、その後北西へと進み、8日後に八丈島に到着します。海岸に上陸した6人は、島民から日付を教えてもらい、4月25日（6月12日）であることを知ります。

その後、彼らは八丈島を離れ、5月5日には伊豆国の下田（現：静岡県下田市）に到着し、漂流の詳細を下田奉行所に報告しました。

漂流の影響と調査

この漂流事件は江戸の人々の間でも大きな話題となり、延宝3年（1675年）4月には幕府が無人島に調査船を派遣しました。調査船「富国寿丸」は、船頭の島谷市左衛門を含む32人の調査団により構成され、下田を出発し父島に到達しました。調査団は約36日間、父島や母島で地図の作成や緯度測定を行い、さらに父島に祠を建設しました。

この調査作業は小笠原諸島への日本の先占権を国際的に証明するものであり、後の対日英米間での領有権争いの根拠の一つとなりました。

結論

長右衛門の漂流とその秩序は、江戸時代の海洋史において重要な出来事とみなされており、日本が小笠原を領有する根拠ともなった一連の調査が実施されました。彼らの勇敢な行動と冒険が、後世においても語り継がれています。

もう一度検索