長安君 (前燕)

長安君（ちょうあんくん）

長安君（生没年不詳）は、五胡十六国時代の後燕の成武帝、慕容垂（ぼようすい）の妻の一人です。彼女の生涯は、当時の政治情勢と深く結びついており、慕容垂の運命を大きく左右しました。

生涯

長安君は、鮮卑（せんぴ）の可足渾（かそくこん）氏の出身であり、前燕の文明帝、慕容儁（ぼようしゅん）の皇后である景昭皇后（けいしょうこうごう）の妹にあたります。

段氏の死と慕容垂の再婚

前燕の光寿2年（358年）、慕容垂の最初の妻であった段氏（だんし）が、景昭皇后によって冤罪を着せられ、拷問の末に亡くなりました。この事件は、慕容垂と皇后の関係に深い亀裂を生じさせました。その後、慕容垂は段氏の妹と再婚しますが、皇后はこれに反対し、慕容垂に段氏の妹との離婚を強制し、代わりに自分の妹である長安君を慕容垂と結婚させたのです。

慕容垂の怒りと亡命

皇后の強引なやり方に、慕容垂は怒りを募らせ、兄である皇帝夫婦との関係はさらに悪化しました。369年、ついに慕容垂は、段氏の妹や息子たちと共に、前秦（ぜんしん）の苻堅（ふけん）のもとへ亡命することを決意します。この際、長安君とは離別することとなりました。

長安君自身は、政略結婚の道具として翻弄された女性と言えるでしょう。彼女の意思とは関係なく、慕容垂と皇后の対立に巻き込まれ、最終的には慕容垂の亡命という形で、その生涯に大きな影響を与えました。

伝記資料

長安君に関する記述は、以下の歴史書に見られます。

『晋書』（しんじょ）載記
『十六国春秋』（じゅうろっこくしゅんじゅう）
* 『資治通鑑』（しじつがん）

これらの資料から、当時の政治情勢や人間関係を垣間見ることができます。長安君の生涯は、五胡十六国時代の複雑な歴史を象徴する出来事の一つと言えるでしょう。

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