長尾輝景

長尾輝景

長尾輝景（ながお てるかげ）は、安土桃山時代の武将で、上野国（現在の群馬県）を拠点とした白井長尾氏の第九代当主です。父は八代当主・長尾憲景。本来は兄の憲春が嫡男でしたが、何らかの事情で輝景が家督を継承することになりました。

上杉・武田・北条の間で

輝景は越後の戦国大名、上杉輝虎（後の謙信）に仕え、その偏諱を受けて「輝景」と名乗りました。白井長尾氏は関東管領山内上杉氏の重臣であり、謙信への仕官はその伝統的な関係を引き継いだものです。

謙信の死後、上野国は武田氏の侵攻を受けます。真田昌幸らの攻撃により、輝景の居城である白井城は陥落寸前となりました。父・憲景は武田氏に降伏する際、形式的に家督を輝景に譲るという形を取ったとされます。

天正10年（1582年）、武田氏が織田信長に滅ぼされると、輝景は上野国を任された滝川一益と連携し、白井城を奪還します。しかし、同年中に本能寺の変が起こり情勢は激変。輝景は後北条氏に従属し、弟の鳥房丸（後の政景、景広）を人質として差し出しました。

天正11年（1583年）に父・憲景が亡くなると、白井長尾氏の家中では、北条氏政に寵愛されていた弟・鳥房丸（政景）を当主とすべきだとする派閥と輝景支持派が対立します。天正13年（1585年）、政景が帰国すると対立はさらに激化。親北条派重臣が輝景派重臣を謀殺する事件も発生し、輝景は親北条派重臣を出仕停止とするなど、家中の緊張は極度に高まりました。

天正17年（1589年）、病に倒れた輝景は、親北条派によって強引に隠居させられ、政景が当主に擁立されたとも伝えられます。ただし、同年末に輝景が豊臣秀吉への備えについて指示した文書も存在し、この時の家督継承には異説もあります。

いずれにしても、翌年の天正18年（1590年）、豊臣秀吉による小田原征伐で後北条氏が滅亡すると、白井長尾氏も改易されました。所領を失った輝景は、越後の上杉景勝を頼り、再び上杉氏に仕えることとなります。

後に弟の景広（政景から改名）も景勝に仕え、輝景は彼を後継者としたようです。慶長3年（1598年）、上杉景勝から輝景に所領安堵状が発給された記録を最後に姿を消し、その後は景広が当主として登場するため、この安堵状を受けた後に没したと考えられています。

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