白井城

白井城の歴史と構造

白井城は、群馬県渋川市白井地区に位置する、室町時代から江戸時代初期にかけて存在した日本の城です。地元では「しろいじょう」と呼ばれています。この城は、利根川と吾妻川が合流する地点に突き出した舌状台地に築かれており、その立地が戦略的に非常に重要でした。東西約800メートル、南北約1200メートルに広がる広大な城域を持ち、本丸を中心に二の丸、三の丸、北郭、総郭が北に連なり、南には南郭と新郭が配置されています。城の南側が尖った三角形になっているのが特徴で、西側は吾妻川に面した断崖となっており、天然の要害をなしていました。南東側には白井宿が広がっていました。

築城と戦国時代の動乱

築城時期は明確にはわかっていませんが、南北朝時代に長尾景忠がこの地に入り、白井・総社長尾家を開いたことが始まりとされています。その後、長尾景仲の時代に享徳の乱などの戦乱が激化したため、白井城が築かれたと推測されています。戦国時代には、白井長尾家の拠点として機能しました。この地は越後と関東を結ぶ交通の要所に位置していたため、白井長尾家は代々この地を支配していました。しかし、長尾景春が山内上杉家に反乱を起こした際には、一時的に山内上杉氏の支配下に入ることもありましたが、基本的には白井長尾家の居城として機能し続けました。長尾景春の孫である景誠が家臣に暗殺された後、総社長尾家から長尾憲景が入り白井長尾家を継承しましたが、勢力は徐々に衰退していきました。山内上杉氏が越後に逃れると、白井城は上杉謙信の支配下に入りました。

武田氏の侵攻とその後

永禄年間に入ると、甲斐の武田信玄が西上野への侵攻を開始しました。武田家臣の真田幸綱と信綱によって、1567年に白井城は落城しました。その後、白井長尾家が一時的に城を奪還しますが、上杉謙信の死後に起こった御館の乱により、情勢は大きく変化します。上杉景虎が敗死し、上杉景勝が武田氏と同盟を結んだことで、長尾憲景は武田家に身を投じることになりました。武田氏が織田・徳川連合軍によって滅亡すると、上杉憲景は後北条氏に属し、憲景の死後は子の政景が城主となりました。

豊臣政権と江戸時代

1590年、豊臣秀吉による小田原征伐で、前田氏や上杉氏らの軍勢によって白井城は攻略され、白井長尾家の支配は終わりを告げました。徳川氏が関東に入ると、本多康重が白井藩を立藩しましたが、その後藩主は頻繁に変わりました。松平康長、井伊直孝、西尾忠永などが藩主を務め、最終的には本多紀貞が藩主となりましたが、紀貞が跡継ぎなく死去したことで、1623年に白井藩は廃藩となり、白井城も廃城となりました。

現在の白井城

現在、白井城の大部分は農地や宅地となっていますが、本丸周辺は2004年に渋川市の史跡に指定され、土塁や石垣、堀などが整備・保存されています。寛政4年（1792年）までに作成された白井城の絵図も残っており、当時の様子をうかがい知ることができます。

白井城は、その歴史を通じて、関東の戦国時代における重要な拠点であり続けました。現在もその一部が残り、訪れる人に当時の歴史を伝えています。

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