長崎・佐賀連続保険金殺人事件

長崎・佐賀連続保険金殺人事件

1992年と1998年に、佐賀県と長崎県で発生した連続保険金殺人事件。この事件は、一人の女性とその愛人によって引き起こされた、二つの痛ましい殺人事件と、それに伴う保険金詐欺未遂、強盗事件などを含む複雑な事件です。

事件の概要

事件の主犯格である女Yは、看護師の資格を持ち、睡眠薬の調合が可能でした。彼女は愛人の男Hと共謀し、自身の夫と次男に多額の生命保険金を掛け、計画的に殺害しました。この事件は、保険金目的の殺害という残虐性、また、家族を手にかけたという点で、社会に大きな衝撃を与えました。

佐賀事件

1992年9月10日、Yは夫に睡眠導入剤を混入したカレーライスを食べさせ、その後、佐賀県太良町の大浦海岸で転落させ水死させました。これにより、約9,000万円の保険金を騙し取りました。

事件の背景には、複雑な人間関係がありました。Yの夫はホステスと不倫関係にあり、そのホステスの夫であるマスターから、Yは脅迫を受け、愛人関係に陥っていました。その後、Yはマスターのスナックで働き始め、そこでHと出会い、愛人関係になります。Hは、マスターとの関係を清算する代わりに、Yに夫への保険金殺人を持ちかけたのです。

長崎事件

1998年10月26日、Yは次男を夜釣りに誘い出し、睡眠薬を飲ませた上で、翌27日未明、Hと共に、長崎県小長井町の小長井港で海に突き落としました。次男は自力で岸まで泳ぎ着きましたが、Yは岸にしがみつく次男の頭を押さえつけ、水死させました。次男には約3,500万円の保険金がかけられていましたが、この保険金は支払われることはありませんでした。

さらに、この事件に先立つ9月29日には、HとYは佐賀県鹿島市で知人宅に押し入り、現金や貴金属などを強奪するという強盗事件も起こしています。

刑事裁判

次男の遺体の司法解剖により、事件が発覚。長崎県警は捜査を開始し、YとHの関与が浮上しました。Yは逮捕後、犯行を自供し、1999年8月30日に両名は殺人容疑で逮捕されました。その後、佐賀事件についても再逮捕され、合同捜査本部が設置されました。捜査の結果、Yの長男と長女にも保険金が掛けられており、長女には睡眠薬を飲ませていた事実も発覚しました。

刑事裁判では、2件の殺人罪、詐欺未遂罪、詐欺罪、窃盗罪、住居侵入罪、強盗罪に問われました。2000年2月15日、長崎地方裁判所で初公判が開かれ、32回にわたる公判を経て、両被告は起訴事実を認めました。しかし、犯行の主従関係については争われました。

2002年7月23日、検察官は両被告に死刑を求刑。2003年1月31日、長崎地裁は両被告に死刑判決を言い渡しました。しかし、控訴審では、2004年5月21日、福岡高裁は、Yについては無期懲役とし、Hについては一審判決を支持しました。高裁は、佐賀事件では両被告の関与が同程度だったものの、長崎事件ではHが主導的だったと判断し、Yの更生の可能性や、子供たちの感情などを考慮して、死刑を回避しました。Hは最高裁まで争いましたが、2008年1月31日に死刑が確定しました。一方、Yは最高裁に上告しましたが棄却され、無期懲役が確定しました。

事件の背景

愛人のHはギャンブル依存症で多額の借金を抱えており、Yの資産や夫の保険金はギャンブルに使われていました。HはYを「金づる」としか見ておらず、愛情はなかったとされています。また、Yに殺害された次男の卒業文集には、母親への感謝の言葉と、今後も変わらず育ててほしいという願いが綴られていました。

現在

2020年9月時点で、Hは死刑囚として福岡拘置所に収監されています。この事件は、金銭欲と歪んだ人間関係が引き起こした悲劇として、多くの人々に深い教訓を与えています。

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